皆さんは、映画を見て大粒の涙を流した経験はありますか?
最近でいえば「鬼滅の刃」の劇場版で涙した、という話はよく耳にしますよね。
僕は子供の頃から映画が大好きだったのですが、かなり性格が歪んでいたので素直に涙を流すことはありませんでした。
いつも変な角度から物事を見てしまう悪い癖があり、感動するのが難しかったのです。
しかしそんな暗黒少年の目に涙をあふれさせた奇跡の映画が何本か存在しました。
中でも観測史上、最大の降涙量を記録したのが、14歳の時に映画館で観た
「遠い夜明け」という映画です。
中学生の頃、たまに1人で映画館に行っていました。
別に友達がいなかった訳ではありません。当時の映画といえばアクション映画の全盛期。シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ジャッキー・チェンの3大スターが大人気で、僕もそっち系の映画は友達と観に行きました。
しかし暗黒少年がっちには、別の好きなジャンルがあったのです。
それは「重厚な人間ドラマ」です。
あまり頭のよくないハナタレ小僧だった僕がちゃんと映画の内容を理解できていたのか、甚だ疑問ですが、好きだったのだから仕方ありません。
しかしそんなジャンルの映画を好む同級生などおらず、寂しく1人で観に行っていたのです。
でも寂しかったのは最初だけ。1人の方が映画の世界にどっぷりと浸れることに気づいてしまいました。
では、僕が今までに観た数々の人間ドラマの中でも特に感動した映画、「遠い夜明け」をご紹介しましょう。
僕は人間というのは基本、愚かな生き物だと思っています。
特にそれを強く感じるのが、「人種差別」の存在です。
肌の色の違い、民族の違い、宗教の違い、職業の違い、男女の違い、生まれた国の違い等々、人それぞれ、いろいろな違いがあります。当たり前です。
でもそれの何が気に入らないのか、自分と違うものに対してやたらと見下したり攻撃する人達がいます。
どうでもええやんそんなこと。
自分と違う人がいるから、人生楽しいんです。自分の持っていないものを持っている人って素敵だと思いませんか?
でも人間の世界では何故か根強く「差別」が残っています。これからもなくなることはないでしょう。
そしてそんなくだらない「人種差別」を「国の政策」として行っていたという信じられない国が存在しました。
「南アフリカ共和国」です。
今ではもうなくなりましたが、ほんの30年近く前まで、この国では「アパルトヘイト」という人種隔離政策が堂々と行われていたのです。
これを詳細に語ると本1冊分ぐらいになってしまうのでやめておきますが、要するに支配者層である白人の利権を守る為に、それ以外の「非白人」を抑圧する恐ろしい法律を作ってしまったのです。
特に黒人たちは住む場所も決められ、職業も限られ、裁判をろくに受けることもできない、生まれた時から自由も何もない人生を強いられていたのです。
「遠い夜明け」は、アパルトヘイト真っ盛りの南アフリカを舞台に、白人新聞記者と黒人運動家の交流を通じて、友情と家族の絆、自由とは、幸せとは何かを問いかけるまさに重厚な人間ドラマなのです。
そしてこの映画、何と実話だというから驚きです。
中二のハナタレ小僧が観に行くような映画ではないですよね・・・。
遠い夜明け(原題:CRY FREEDOM)
1987年 アメリカ作品
監督は1982年の「ガンジー」でアカデミー賞(作品賞、監督賞)を受賞した巨匠、リチャード・アッテンボロー。
出演は、白人の新聞編集長に1988年の「ワンダとダイヤと優しい奴ら」でアカデミー助演男優賞を受賞したケビン・クライン。
黒人運動家に2001年の「トレーニング デイ」でアカデミー主演男優賞を受賞したデンゼル・ワシントン。
アカデミーだらけやん!お腹いっぱい。
(あらすじ)
そこで二人の男が出会った。
一人は黒人解放運動家、スティーブ・ビコ。彼は常に警察の監視下での生活を余儀なくされ、不自由な暮らしを強いられていた。
もう一人は白人の新聞編集長、ドナルド・ウッズ。プール付きの豪邸で黒人のメイドを雇い、家族と優雅な暮らしをしている。
ある日、ウッズがビコを取材に訪れた。
最初はビコに対してあまりいい印象を持っていないウッズだったが、取材を続けるうちにビコの人間性に惹かれていく。
また、黒人たちが直面している厳しい現実、アパルトヘイトの恐ろしさを実際に目の当たりにし、この国のあり方自体に疑問を感じ始める。
ビコも黒人を差別的に扱わないウッズの公平な考え方、人間性に惹かれ、2人の間には友情と信頼関係が芽生えていくのだった。
しかし事件は起きた。
ビコが不当な理由で逮捕され、拘留中に警察からの暴力によって非業の死を遂げてしまったのだ。
だが警察が発表した死因は、「ハンガーストライキによるもの」だった。
これに疑問を抱いたウッズは、強引に遺体安置所に押し入り、明らかに暴力による外傷が見られるビコの変わり果てた姿を目撃する。
これによりウッズはある決心をする。
ビコの死体写真を国外へ持ち出し、本を出版して南アフリカの現状を世界に訴えかけようというのだ。しかしこの動きを察知した警察がウッズを監視し始める。
果たして彼は警察からの妨害、追跡を逃れ、家族と共に無事にこの国を脱出することができるのか?
という話です。
う~ん。今日のブログは凄く真面目じゃないか。やればできるじゃないか。
よし、これを機に社会派ブログに転向しよう!
・・・無理無理。
扱っているテーマがテーマだけに、重苦しい映画だと思われるかもしれませんが、全然そんなことはないですよ。
色々と考えさせてはくれるものの、ハラハラドキドキの超一級エンタテイメントに仕上がっています。
また この映画をより素晴らしいものにしているのが、当時はまだブレイク前だったデンゼル・ワシントンの熱い演技!彼のおかげで感動がより深いものとなっています。
「こんな人が学校の先生なら、僕ももっと真面目に授業を受けるのになあ。」
暗黒少年は不当な言い訳をするのでした。
とにかくこの映画、オススメです。上映時間2時間38分という長い映画ですが、全く長さを感じません。一気に観れます。
ゴスペルタッチの壮大な歌と共に訪れるエンディングで、暗黒少年は大粒の涙を流しました。
ドバーッと溢れてくる涙を抑えることができませんでした。
梅田ピカデリーの暗闇の中で。
しかし今思えば、目を真っ赤に腫らしながら映画館から出てくる坊主頭のジャージ少年。
周囲の人々の目にはどのように映っていたのでしょうか。
今回、久々にDVDを鑑賞しましたが、やはりいい映画だ、と再確認しました。
この映画が公開された4年後、1991年。
当時の南アフリカ大統領、デクラーク氏が「アパルトヘイト廃止」を宣言。
そして1994年、長きにわたる投獄期間を経て釈放された黒人運動家「ネルソン・マンデラ」氏が初の全国民による選挙で黒人初の大統領に選ばれ、ついにアパルトヘイトは完全に消滅しました。
この映画の邦題は「遠い夜明け」ですが、夜明けはそんなに遠くなかったのです。
さらにそれから25年後、2019年。日本で開催されたラグビーワールドカップ。
優勝したのはその「南アフリカ共和国」でした。
黒人と白人が手を取り合い、チーム一丸となって勝ち抜き、優勝旗を手にしている姿を見ると、僕はこの映画を思い出し、ウルウルっときてしまいました。
日本が負けたのは悔しかったですが、負けた相手が南アフリカでよかったと思います。
そういえばこの映画でもう一つ思い出したことがあります。
映画館で買った「遠い夜明け」」のパンフレット。何度も何度も繰り返し読み、大事に大事にしていました。
ところがある日、父が何かの広告の冊子と勘違いし、古新聞の日に出してしまったのです。
・・・・・・・・・・
思い出すと違う涙が出て来ました。
この日を境に、更なるダークサイドへと突き進むがっち少年でした。
今日の1曲:John Lennon「Imagine」