がっちの航海日誌

日々の些細な出来事を、無理やり掘り下げます。

飛騨の豆腐ステーキはステーキよりも美味で候

とある住宅街にひっそりと佇む考古学者ガッチー・ジョーンズの事務所。

この日はいつになく活気に溢れていた。

ジョーンズ「うめちゃん、うめちゃん!遂にやったぞ!」

その尋常ならぬジョーンズの声色に、「探偵ナイトスクープ」を見ながらうたた寝をしていた秘書の柴犬うめちゃんは飛び起きた。

f:id:gatthi:20210313165717j:plainうめちゃん「どうしたことよ、先生!」

ジョーンズ「私は今まで考古学者を謳いながらレコードの発掘しかしてこなかったが、遂にやったのだよ。世紀の大発見を!」

うめちゃん「何を見つけて?」

ジョーンズ「飛騨高山で、古代飛騨人のミイラを発見したのだ。これはもう世界史を覆すほどの大事件だぜベイベー。」

うめちゃん「すごいことよ、先生!」

ジョーンズ「じゃあ明日の朝、ワイドビューひだに乗って一緒に見に行こう。」

f:id:gatthi:20210627151736j:plainワイドビューひだ

大阪~高山を直通で結ぶ夢の特急。大阪を出発する時はわずか3両編成なのだが、岐阜で名古屋からやって来る同じ車両と合体してから再び高山を目指すという、ウルトラマンエースのような動きをすることで有名である。

2人は夢見心地で4時間の鉄道旅を楽しんだ。

f:id:gatthi:20210627152337j:plainそして到着。ジョーンズが本物の考古学者として名を上げる時がやって来たのだ。

f:id:gatthi:20210627152628j:plain駅前でレンタカーを借り、発掘現場へと向かった。

f:id:gatthi:20210627152849j:plain飛騨物産館

高山グリーンホテル内にある、飛騨高山のお土産が豊富に揃う、充実のお土産屋さんだ。

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ジョーンズ「ここだよ、うめちゃん。今から凄い物をご覧に入れよう。」

うめちゃん「ワクワクしてよ、先生。」

するとジョーンズは、店内の端の方から箱を1つ、運んできた。

ジョーンズ「これが、問題の棺だ。この中に古代飛騨人のミイラが安置されているのだ。」

f:id:gatthi:20210627153536j:plain飛騨街道 旅がらす

うめちゃん「・・・先生。これ、ただのお土産じゃなくて?」

ジョーンズ「まあまあ、とりあえず蓋を開いてみたまえ。」

f:id:gatthi:20210627153821j:plain開けてみると、そこには趣のある絵と、意味深な文字が刻まれていた。

f:id:gatthi:20210627154005j:plainそしてこれを更に開くと、

f:id:gatthi:20210627154359j:plain2体のミイラが出現!

うめちゃん「す、凄いことよ、先生!」

ジョーンズ「だろう?保存状態も実に良い。」

 

と、その時!

f:id:gatthi:20210627154918j:plain旅がらす「お初にお目にかかります、ジョーンズ教授、うめ殿。拙者、飛騨の旅がらすと申す者に候。」

うめちゃん「喋ったわ、先生!」

ジョーンズ「マジで!?」

旅がらす「本日は遠路はるばる拙者のような者に会いに来ていただき、身に余る光栄に候。」

ジョーンズ「いや、こちらこそ会えて嬉しいよ。しかし君、初対面の人の前で帽子を被ったままでは失礼じゃないか。」

旅がらす「あ、これは失礼致しまして候。では。」

 

f:id:gatthi:20210627155747j:plainジョーンズ「うおっ!」

f:id:gatthi:20210627160332j:plain顔怖っっ!!
旅がらす「はい、よく言われまする。ところで教授、この後のご予定はございますか?」

ジョーンズ「いや、何もないのだが、とりあえずお腹は減ったかな。」

旅がらす「それでは、拙者がお食事処へご案内いたしましょう。飛騨のソウルフードを食べていただきたく候。」

ジョーンズ「ほほう!それはありがたい。お願いするよ、からす君。」

店員さん「お客様!袋を開ける前にレジで精算の方をお願いします。」

ジョーンズ「・・・・・・・。はい。すいません。」

 

こうして一行はレンタカーに乗り、旅がらすの案内でお店へと向かった。

高山の中心地から北へ10数分程で到着した。

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f:id:gatthi:20210627192026j:plain国八食堂

高山の観光地からは離れているにも関わらず、開店前から長蛇の列ができる超人気店。

素朴な飛騨の郷土料理がいただける。

旅がらす「本日は、こちらで飛騨名物鉄板焼き豆腐』を召し上がっていただきたく候。」

ジョーンズ「それ、なんか聞いたことがあるぞ。」

旅がらす「飛騨版の豆腐ステーキと申せば分かりやすいかと。お店の看板の左下の方をご覧くださいませ。あのイラストが鉄板焼き豆腐で候。」

f:id:gatthi:20210627193233j:plainジョーンズ「うーん。イラストではイメージが湧かないな。とにかく入ってみよう。」

店内は満席だったので、少し待ってから入ることができた。昼時から外れた時間とはいえ、いつもはもっと待たなくては入れないらしい。ラッキーマンだ。

店内は飛騨らしい落ち着いた和の雰囲気で、心地よかった。結構な広さだ。

地元のお母さん達で切り盛りしている感じが、凄くいい。

テーブル席がメインだが端には小上がりの席もあり、ここがなんかよさげだ。

f:id:gatthi:20210628203928j:plainジョーンズはここに座りたい一心でギラギラとした視線を送っていたが、それが嫌がられたのか、テーブル席へ通された。世の中、がっつけば良いというものではない。

一行は旅がらすの勧めで、このお店を訪れた人はほぼ全員が注文するという「とうふ焼定食」を注文した。これは鉄板焼き豆腐にご飯やみそ汁がセットになっている定食だ。

しばらくして、ジュワ~ッ!!という爆音と共に、鉄板焼き豆腐がやって来た。

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おおっ!これは美味そうだ!なるほど、確かに豆腐ステーキと言ってもいいだろう。そして見た目は看板のイラスト通りだ。香ばしい匂いがたまらなく食欲をそそる。ちなみにこれは2人前だ。

f:id:gatthi:20210629200858j:plainとうふ焼定食

ジョーンズ「それでは皆さん、手を合わせて。」

「手を合わせて。」

「いただきま~す!」

給食当番ジョーンズの号令の後、一行は鉄板焼き豆腐をむさぼるように食べた。

ジョーンズ「美味い!見た感じは厚揚げとネギに醤油をかけているだけのように見えるが、食べると全然違うな。この醤油だれ、非常に奥深い味がするぞ。」

うめちゃん「ご飯が止まらなくてよ、先生!」

ジョーンズ「朴葉みそといい、この鉄板焼き豆腐といい、飛騨には何故こんなにも魅力的なご飯の友が多いのだ。私は飛騨牛のステーキよりもこの豆腐ステーキの方が好きなぐらいだよ。グッジョブ、からす君。」

旅がらす「ご満足いただけたようで、安堵しておりまする。」

f:id:gatthi:20210629202305j:plainこんな風にご飯にのせると、永遠にご飯を食べていられそうな気がしてきたジョーンズであった。

ジョーンズ「いや~、これは毎日でも食べたいね。でもちょっと甘いものが食べたくなってきたな。」

旅がらす「それでは、教授。」

f:id:gatthi:20210629202834j:plain「どうぞ、拙者を食べて下され。」

ジョーンズ「ええっ!?」

旅がらす「拙者、実は美味しいモナカなので候。」

ジョーンズ「そうか。じゃあいただきます。って食べにくいわっっ!!

旅がらす「でもお土産の身としては、食べていただかないと困りまする。」

ジョーンズ「君、ミイラじゃないの?」

旅がらす「お土産のモナカで候。」

ジョーンズ「・・・・・・・。」

f:id:gatthi:20210701202335j:plainそれはそれは、美味しい美味しいもなかでした。

 

帰路につくワイドビューひだの車窓を眺めながら、うめちゃんは思いにふけっていた。

「結局はるばる高山まで来てミイラの発見どころか、お土産のもなかを買って鉄板焼き豆腐を食べただけじゃなくてよ。でも、まあいいわ。

美味しいものがこの世の全てよ。

あの考古学者にして、この秘書あり、である。

そしてジョーンズは別のことに思いを巡らせていた。

「なんか鉄板焼き豆腐ってめちゃめちゃ美味しかったんだけど・・・

原価は安そうだな。

しかしあの味を家庭では再現できまい。

やはり飛騨へ行くしかありませんぜ、インチキ教授!

新型コロナが収まったらね。

 

今日の1曲:The Three Degrees「ソウル・トレインのテーマ」