毎年秋になると訪れる、「結婚記念日」。
それまで好き勝手に生きてきた自分と決別し、パートナーと一緒に歩んでゆく「第2の人生」の始まりの記念日です。
結婚した頃の気持ち、その時に家族や諸先輩方、友人達からいただいた激励のお言葉、結婚式の思い出、それらを思い出しながら初心に立ち戻る、とても大事な1日です。
その結婚記念日前後に毎年実施しているのが、
「ちょっと背伸びしたディナーに出かける」ことです。
しかし僕はどうしても1回目の結婚記念日、即ち結婚1周年の日のことが頭から離れないのです。
それはその日の、昼下がりの出来事でした。
初めて迎えた結婚記念日を、我々夫婦は感慨深げに過ごしていました。そして夜はイタリアンのディナーへ行こう!と盛り上がっていました。ただその前に、すぐ近所にある僕の実家へ挨拶しに行きました。挨拶というと堅苦しくなるので、別に結婚1周年だということは言わず、ただただ遊びに来たような雰囲気で談笑していました。
そしてそろそろ帰って豪華ディナーへ行こうかな、と思っていた時、しばらく席を外していた父が帰って来ました。そして衝撃の一言を放ちました。
「ほっかほっか亭で弁当注文して来たぞ。」
ええっ!?・・・今日は豪華なイタリアンのディナーの予定で・・・今から向かおうと・・・。
「あ、ありがとう・・・。」
すると父は史上最高のドヤ顔でとどめの一言。
「松茸弁当にしといたぞ。」
「あ、ありがとう・・・。」
この間の悪さ、
親父~!あんた最高やで!
僕らの為に奮発して松茸弁当にしてくれた父親に感謝しながら、美味しくいただきました。
こうして結婚1周年記念豪華ディナーは松茸弁当になったのです。
これが世に言う「ほっかほっかファーザー事件」です。
いやー、ディナーの予約してなくてよかった!
それから結婚記念日が来るたびに、この事件の話で持ち切りになります。そのおかげで記念日を忘れずにいれるのかもしれません。親父、ありがとう!
そして訪れた今年の結婚記念日。今年は「シャトーブリアン」を食べに行くことにしました。
「シャトーブリアン」。この甘美な響き。牛1頭の中でわずか600gぐらいしか取れないという超希少な高級部位です。記念日という大義名分なくしては手が出せません。
しかしいくら記念日といえども牛さんには手が届かず、
豚さんのシャトーブリアンを食べに行きました。
豚ブリアンです。それでも安くはないですが、牛さんに比べたらリーズナブルです。
その極上の豚ブリアンをいただけるお店が、大阪府吹田市に存在します。
JR吹田駅前に広がる「旭通商店街」。昭和の商店街の雰囲気が色濃く残り、隠れた名店が点在する魅惑の商店街です。ここのかなり駅寄りの所に、トンカツの名店がひっそりと佇んでいます。
エペ・クープ
北新地の超名店「epais(エペ)」から暖簾分けされたお店です。
お店の外観からも何となく北新地の高級な雰囲気が漂っており、
なんだか入る時も緊張するぞ。でも予約しているはずだから「お前帰れ」とは言われない、はずです。
そして店内へ。
すると、「いらっしゃいませ」と大将が満面の笑みで出迎えてくれました。
お顔から人間の良さがにじみ出ています。この店構え、清潔感溢れるお洒落な店内、柔らかい物腰の中にも何らかのオーラを感じさせる大将。
名店の予感だ・・・。
そしてその予感は的中しました。
席はわずか6席。予約は必須です。ランチは予約出来ませんが、ディナーは出来ます。僕は開店同時17時に予約しました。好きやな~開店同時に行くの。
着席すると、折り鶴で身を包んだお箸が出迎えてくれます。
なんかいいな~これ。食事が出てくる前から心を鷲づかみにされます。
ちなみにシャトーブリアンは希少なので、予約時に取り置きをしてもらわないとありつけません。
そして一発目から衝撃の一品が登場。
玉子の上にタルタルソース、そしてキャビアが載っています。
キャビアなんて今までの人生でほんの数粒しか食べたことがありません。
う~ん。お洒落だ。
ほんまにトンカツ屋さんか?ここ。
なんて美味しいんだ。キャビアの味は正直よくわかりませんが、卵の美味しいこと。
かなりシュッとした鶏さんが出産した卵なんでしょう。
2品目。
ここは竜宮城ですか!?
蓋を開けると煙が出て来そうな器が置いてあるぞ。
ぱかっ。
煙は出ず、味噌っぽいものが出て来ました。
鹿児島の豚味噌だそうです。
スプーンで横の野菜に味噌を載せていただきます。この味噌がまた極上の一品でした。
コクがあり、なんだかご飯にも合いそうな感じです。朴葉みその対抗馬出現!
そしてメイン登場の前の序曲として、「塩」が運ばれてきました。
バインダーのような黒い板に載っているのが塩です。これをトンカツにつけて食べるようです。
ソースはカウンターの前に並べてあります。
塩とソースだけのメニュー表なるものが存在します。
種類多っ!
好きな物を出してもらえるようですが、もう何が何だかわかりません。最初に出て来た塩でいただくことにしました。
次に「シャトーブリアンの衛兵」というべきご飯とみそ汁がやって来ました。
このみそ汁が強烈にいい香りを放っていました。脇を固める俳優陣にも手抜きなし。
そしてついに、僕の頭の中だけで勝手に鳴り始めたファンファーレと共に、
豚ブリアン王が降臨!!
ゴゴゴゴゴ・・・
まあ、何て気品に溢れた、血色の良いお顔つきなんでしょう!
いただきま~す!
塩とソースで半分ずついただきました。
ソースは大阪・高槻の「クローバーとんかつソース」にしました。飲みたくなるようなフルーティーな味わいの、非常に美味しいソースでした。
でもやっぱり「塩」がいいですね。肉本来の味が伝わって来ます。
豚ブリアン王は、想像を超える異次元のトンカツでした。
脂身が少ないのに、異常に柔らかいという驚異の食感。これをトンカツと呼んでいいのか?もはや違う食べ物です。
圧倒的な王の美味しさに、ひれ伏すしかありませんでした。
最後はさりげない、締めのデザート。
ハートを貫かれたマスカットの下はヨーグルトです。
トンカツの余韻を消すことなく、さっぱりと締めてくれる良いデザートです。
ごちそうさまでした!
この至高のコースが3000円を切るんですから、安いと思います。
もう牛さんのシャトーブリアンはいいです。
お店の雰囲気、料理のクオリティ、大将のお人柄、全てにおいて素晴らしいお店でした。
「がっち百名店」に登録しておこう。(何それ?)
また来ます!次は父親を連れてこようかな。
え?とんかつ?もうほっかほっか亭でとんかつ弁当買ってきたで。
早めに言っておこう。