真夏の押しの強い太陽が容赦なく照り付ける大都会、大阪のど真ん中で、人生最高の「みたらし団子」に出会いました。
「みたらし団子」
日本全国、どこの和菓子屋さんでも存在感を放ち、老若男女問わず愛され続ける日本人のソウルスイーツ。
飛騨高山の醤油のみたらし団子(これ大好き!)のように、地域特有のものもありますが、今回出会ったのは、甘いタレに包まれた王道のザ・みたらし団子。
生まれて半世紀近く、ずっと大阪に住んでいますが、こんな凄いみたらし団子が地元にあったなんて、今まで全然知りませんでした。
知るきっかけは、テレビ番組でした。
僕は徹底して早寝、早起きなので、夜8時を過ぎるとだんだん眠たくなってきます。
9時を超えると強い眠気に襲われ始め、10時前にカラータイマーが点滅。
10時を過ぎるとそのままシャットダウンします。
なので9時以降のテレビ番組は「深夜番組」という位置づけになり、普段ほとんど観ることがありません。
どうしても観たい番組は録画して観ますが、録画してまでは観なくてもいいけどちょっと観たいな~という番組がいくつかあり、毎週火曜日の夜9時にその一つがあります。
「マツコの知らない世界」という番組です。
ある特定のジャンルを極めた変態たちが毎回登場して、愛情たっぷりにその道の魅力をプレゼンし、マツコさんに激しくいじられる、という内容です。
いつもかなりクセの強い変態な人々が出て来ますが、彼らを見ていると、何となく自分との共通する部分もほんの少しだけ感じることがあり、共感できる時が稀にあるのです。
ほんまに少しだけ・・・か?
この変態バラエティのある日のテーマが、
「みたらし団子の世界」でした。
様々な全国各地の美味しそうなみたらし団子が紹介されていましたが、その中で一際目を引くものがありました。
何やら壺のようなものにみたらし団子がつけてあり、壺の中のタレを好きなだけ絡ませて食べていたのですが、それを見た瞬間に、子供の頃に抱いていた夢を思い出したのです。
がっち少年の見た甘い夢:その①
ミロを好きなだけスプーンですくって、そのまま食べる。
これは大人になってから速やかに実行に移され、もう何度も達成しました。
がっち少年の見た甘い夢:その②
みたらし団子のタレを心ゆくまで団子に絡ませる。
この世でみたらし団子のタレほど、もどかしいものはありません。
精一杯絡ませたつもりが、まだまだ容器に付着しており、全部をくまなく絡ませるのは不可能と言ってもいいでしょう。
最後に容器に残ったタレを見送るがっち少年の瞳は、いつも憂いの色に満ちていました。
「もっとタレを絡ませやすいみたらし団子は存在しないのか」
少年は常に不満を抱いていました。
まさにこの不満を一気に解消できそうな理想のみたらし団子が今、ブラウン管の、いや液晶画面の向こうに存在していたのです!
お店の情報を調べてみると、場所はミナミ。
日本橋の電気街から少し歩いた、ライブハウス「Zepp Namba」の近くにありました。
幾度となく仕事で通っている所ですが、全く知りませんでした。
そしてどうやらお店の敷地内にカフェが併設されているようで、ここでみたらし団子をいただくこともできるようです。
でもこのカフェが凄まじい人気らしく、ネット予約ができるのですが、かなり先の日まで埋まっていました。
仕方ないので、更にその先の日を予約しました。
あのみたらし団子を食べる為なら、いくらでも待ってやろうという気持ちでした。
待って待って、遂にその日が訪れました。
まずはお店の近くにある大国主神社で必勝祈願(何の?)。
「かつての少年よ、いよいよ夢を掴む日がやって来たのだな。」(誰?)
突撃!
浪芳庵
ミナミの雑多な街並みに突然姿を現した、老舗オーラ全開の和菓子店。
どう見ても高級料亭です。
今まで何故知らなかったのか、何となくわかった気がしました。
僕の生きる世界とは明らかに違う世界です。
これこれー!遂に食べれるぞ。
予約しているという安心感をバックに、堂々と暖簾をくぐりました。
運命の分かれ道。左へ行くとテイクアウトのお店。右がカフェです。
カフェは予約で満席でした。そりゃそうだろう。予約すらなかなかできなかったのだから。飛び込みで入るのは無理です。
まだ時間が早かったので、暖簾をくぐってすぐ右にある待ち人席に座って、しばらく敷地内を眺めていました。
素敵な和の空間が広がっていました。
綺麗にしてあります。
奥にテイクアウトのお店が見えます。
こうして待っている間も、ひっきりなしに人が入って来ます。
カフェを予約しておらず諦めて帰る人、老舗オーラにびびりながら入って来て写真だけ撮って帰る人もいました。
その人たちに対して、お店の方はとても丁寧に対応されていました。
社員教育も行き届いているようです。期待値MAX!
そしていよいよ運命の時。
2つ目の甘い夢を掴むべく、不審者入店!
う~んエレガント。
とてもムーディーな、格調高いお洒落空間です。
でも不思議と落ち着きます。ソファ席を予約していました。
おしぼりがいつものとは全然違う、高級感溢れるおしぼりでした。
びびりながら手を拭き、メニューを広げて更にびびりました。
高っっ!!
みたらし団子3本にアイスクリーム、ドリンクのセットが1815円!
岐阜モーニング4回分!
ううっ。大丈夫か。
と言いながら追い串だんご2本を追加。これが夢を目の前にした男の決意だ!
アホ~。
そしてしばらくして、遂に、遂に、待ちに待った「あぶりみたらし」が降臨しました。
ボッカーン!!何これ!?
下の部分に固形燃料が入っており、店員さんが火をつけてくれました。
これにより、常に中のタレが温かく保たれるのです。グッジョブ!
それでは、あぶりみたらし選手の入場です。
開け、フタ!
うひゃひゃ~!!!
がっち二等兵、みたらし団子の引き上げ作業にかかります!
あばばばばーっ!!
タ、タレがなみなみと・・・。さあ心ゆくまで絡ませるぞー!
タレ2度付け大歓迎!!
いただきまーす!
いや、待て!!
スプーンで更に上からかけよう。
幸せ~。
では、いただきます!
美味っっっっっ!!!!!
何だこの滑らかなくちどけ感!!
今まで食べた、どのみたらし団子とも違う、口の中でとろけるような、高級ステーキのようにシューッと溶けてゆくような食感。
タレがまた美味!!
甘いだけではない、奥深い味わい。
2本、3本と次々平らげていきました。
もちろん、何度も、何度も、団子をタレの海へとくぐらせながら。
そしてもう一つ感動したのが、ドリンクのクオリティの高さ。
「イングリッシュ・ブレックファースト」という紅茶にしたのですが、これまた今まで感じたことのない美味しさでした。
紅茶ってこんなに美味しかったの?
しかし追い串だんごを2本追加しておいて良かったです。3本じゃ足りません。
最後の2本はこれまで以上に大量のタレをかけて食べました。
2つ目の甘い夢が叶ったぞ、少年よ。40年後に。
みたらし団子を食べ終わった後も、壺の中にはまだまだタレが残っていました。
でも彼にはまだ出番が残されていたのです。
最後に登場したアイスクリーム。
これに・・・
ドバッ!とかけるとまあなんということでしょう!
極上のみたらしアイスが完成しました!!
め、めちゃめちゃ合うやんけ。
それでもまだタレが残っていたのですが、スプーンで一滴残らず平らげたのは言うまでもありません。
ごちそうさまでした!
最初メニューを見た時は高すぎると思いましたが、決して高くはありませんでした。
この値段に見合うだけの価値は間違いなくあります。
お店の雰囲気、寛ぎ感、味、店員さんの対応、全てにおいてセンスの良い、本当に素晴らしい空間でした。
贅沢だけど、また来れたら来たいな。
この興奮が冷めやらない中、数日後、仕事の日の昼休みに立ち寄ったコンビニで、
レジの横に並んでいたジャンキーなみたらし団子に手を伸ばしました。
当然ながら味など比べるべくもないのですが、このみたらし団子の良い点に気づいてしまいました。
このみたらし団子はジャンキー過ぎるが故に、タレが固まってしまっているのです。
だから絡ませる必要がなく、自動的に一滴たりとも残さずに食べることができるのです。
これで夢を実現できたんじゃないのか!?
でも浪芳庵では夢以上のものを掴むことが出来た。
そう自分に言い聞かせた、がっち48歳の夏でした。
今日の1曲:The Kinks「Tired Of Waiting For You」
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