がっちの航海日誌

日々の些細な出来事を、無理やり掘り下げます。

さよなら白影号

2024年11月某日。

長年苦楽を共にした相棒との、悲しい別れがありました。

ダイハツ コペン 「白影号」

 

【プロフィール】

大阪府池田市生まれの15歳。

趣味:変わった人間を乗せて走ること

好きな食べ物:レギュラーガソリン

得意技:屋根を電動で開けることが出来る

苦手なこと:荷物を載せる

名前の由来:飛騨の地に神出鬼没に現れ、ワインディングをご機嫌に疾走する姿から、往年のテレビドラマ「仮面の忍者 赤影」に登場する忍者「白影」から名付けられた、とする説が有力(諸説あり)。

恐ろしくコンパクトな車体、低すぎるドライビングポジション、ハードな乗り心地から「公道を走れるゴーカート」の異名を取り、車を操る喜びを僕の生活にもたらしてくれました。

世間では「世界最小の電動オープンカー」として有名な車ですが、僕はどうしても幼少の頃からオープンカーに対するイメージが悪く、

「金持ちのアホのボンボンが乗る車」

「イキッてる奴が乗る車」

「日本人が乗っても似合わない車」

「乗ってるだけで恥ずかしい車」

だとずっと思っていました。

オープンカーとは、「石原裕次郎のみが乗って許される車」だと信じて疑わなかったのです。

 

じゃあ何故わざわざこの車を購入したかというと、愛らしい見た目にノックアウトされたからです。

一見、どっちが前か後ろかわからない、お茶碗をひっくり返したような丸みを帯びたキュートなフォルム。

 

日本の四季折々の風景にも違和感なく溶け込むデザイン。

 

一旦走り出せば、日常の風景が非日常に変わる爽快な走り。

 

2人しか乗れず、荷物もあまり載らない(思ったよりは積めるのですが)、という不便な車ですが、たくさんのアバタが全てエクボに変わる、という不思議な車でした。

まあ要するに、オープンカーが欲しくて買ったわけではなかったのです。

 

通勤に、旅行にとずっと屋根を閉じたまま楽しく走っていたある日、その日は突然訪れました。

親友ちーちゃんが北海道から帰省し、2人でドライブに出かけました。

そこでちーちゃんの口から恐怖の一言が飛び出したのです。

 

「屋根開けよか。」

 

それは暑くて暑くて死にそうな、真夏の昼下がりの出来事でした。

白影号の生まれ故郷である池田市にて、遂に屋根を開けて走行しました。

暑っっ!恥ずっっ!

と最初は思いましたが、走り出してみると意外にもめちゃめちゃ気持ちよく、オープンカーに対するイメージが変わった瞬間でした。

ただこの後、箕面の高級住宅街を走っている時、ちーちゃんが大音量で「ボインの歌」をかけ始めた時は人生が終わったと思いました。

しかしちーちゃんが屋根を開けてくれなかったら、1回も屋根を開けることなく終わっていたでしょう。

ありがとう、ちーちゃん!(あ、怪しい。怪しすぎる・・・。)

ちなみにこの写真の日は、震えあがるほど寒い真冬真っ只中の日でした。

ちーちゃんは基本、盆か正月にしか帰阪しないので、どうしても暑い日か寒い日になってしまうのです。

でも一度だけ、

気持ちの良い秋晴れの日に、自分の意志で屋根を開けて伊吹山ドライブウェイを走行したことがあります。

隣りに座っていた妻は風で髪の毛が乱れまくるのを嫌がっていましたが、この時のドライブはとても良い思い出になりました。

 

最近は大きなトラブルもなく、ご機嫌に走り回っていた白影号ですが、この度、売却することになりました。

新しい車に買い替えることになったのです。

その理由は一つ。

 

冬の飛騨路を安全に走行するため。

 

今では毎年の恒例行事となった、奥飛騨温泉郷での雪見風呂。

しかし冬の飛騨の道路は積雪が尋常ではなく、車高の低いコペンでは安全に走行出来ません。

だから今回、断腸の思いで買い替える決意をしたのでした。

ただ、大事な大事な愛車。

絶対に〇ッグモーターのような、いいかげんな中古車屋さんには売りたくありません。

売った後、大切に愛情を持って接してくれるお店じゃないと嫌だったのです。

 

インターネットという時代の最先端のITを駆使し、信頼出来そうなお店を検索した結果、お隣の兵庫県に良さげなコペン専門店を発見。

連絡を取り、実際に現地に足を運びました。

そしてお店から溢れ出るコペン愛を感じ取り、ここで売る決意を固めたのでした。

白影号は通勤で乗っているので、新しい車が納車される前日に売りに行く旨を伝え、しばらく愛車との最後の時間を噛みしめました。

それからは白影号のハンドルを握る度に、湧き出てくる名残惜しさに心が揺さぶられましたが、もう後戻りは出来ません。

今まで何台もの愛車を乗り継いできましたが、これほど名残惜しいのは初めてです。

 

そして11月。遂にお別れの日がやって来ました。

お店の場所は神戸市西区。明石市のすぐ隣りなので大阪からはちょうどいいドライブの距離です。

それが白影号のラストランになりました。

もうこのハンドルを握ることはないのか・・・。

そう思うと、いつもなら何気ない一つ一つの操作ですら愛しく思えてきます。

ああ、もっと乗っていたい・・・。

しかし無情にもラストランは終焉を迎えました。

お店に到着。

最終チェックをしてもらってから、お店の社長さんとお話をしました。

車への愛情が溢れる素敵な社長さんで、やはりこのお店に引き取ってもらえてよかったと思いました。

 

こうして我が愛車コペン白影号は、

仲間たちの群れへと帰って行きました。

この光景を見て、小1の時に観たドラえもんの映画のび太の恐竜のラストシーンを思い出していました。

のび太が大切に育てた恐竜ピー助がのび太たちの元を離れ、仲間の恐竜の群れに帰って行く感動のシーン。

 

うわあーーーん!!あれと同じじゃないかーー!!!

(誰も共感出来ません)

 

しばしの間、別れを惜しんだ後に帰路につこうとすると、社長さんが明石駅まで送ってくださいました。

せっかくここまで来たのだから、と美味しい明石焼きのお店を教えてくださいました。

魚の棚

明石駅前に東西に広がる魚まみれの商店街。

多幸(たこう)

社長さんお勧めのお店。

ちなみに地元の方は「明石焼き」とは呼ばず「たまご焼き」と呼ぶそうです。

失意の中ですが、お腹は減っていました。

おおっ!美味そう!いただきま~す!

う~んそういえば白影号も・・・

こんな丸いフォルムをしていたなあ・・・。

明石焼きのフォルムを見て、別れたばかりの愛車を思い出してしまいました。

もう出汁の味なのか、僕の涙の味なのかわからなくなってきました。

ごちそうさまでした・・・。美味しかったです・・・。

さあ、電車に乗って大阪へ帰ろう。

昔、「ユーポス」という中古車屋さんのCMで竹内力さんが、

ユーポスで車売ったら、帰りは電車や。」

と変な関西弁で言っていたのを思い出しましたが、まさかそれを自分が本当に実践することになろうとは思いもよりませんでした。

さらば明石!さよなら白影号!いいオーナーさんに巡り合ってね!

 

どん底の気分で大阪へ帰りましたが、その翌日、

 

新しい愛車と嬉々として記念撮影する僕の姿がありました。

 

ほんま人間って嫌な生き物・・・。

 

今日の1曲:よしだたくろう「人間なんて」