がっちの航海日誌

日々の些細な出来事を、無理やり掘り下げます。

ROUTE271 ~ 忠犬ガチ公、行列に並ぶ

むかしむかし大阪の北部に、大変クセの強い一匹の犬がいました。

「がっち夫人」と呼ばれる女性の家に住み着いており、パンが大好きな犬として村では有名でした。

毎日毎日、主人が仕事から帰って来るのを待っている健気な姿を見て、村の人達はこの犬のことを「忠犬ガチ公」と呼んでいました。

ある週末の日、この日はがっち夫人がリモートワークで外出できない日だったので、ガチ公の遊び相手は誰もいません。散歩もしてもらえません。

しかしそんな事で落ち込むガチ公ではありませんでした。

それならば主人の為に、と大阪梅田へパンを買いに行くことを決心しました。

リモートワークのストレスを少しでも軽減できるように美味しいパンを食べさせてあげよう、と有名なパン屋さんに並ぶ覚悟を決めたのです。

ガチ公は、非常に主人思いの犬でした。

朝食でもパンを食べたガチ公は、すぐに出発しました。

大好きな阪急電車に乗り、心地よく揺られながら美味しいパンへ思いを巡らせていました。

 

さて、ガチ公が向かったのは、ヨドバシカメラの北側にある「ROUTE271」という行列ができることで有名なパン屋さんでした。

でもこのお店、もともとは高槻市「氷室」という所にある小さなパン屋さんだったのです。

山がすぐ近くにあり、のどかな田園風景が広がる素敵な町です。実はガチ公は幼犬の頃、よく氷室の田んぼで走り回っていたのでした。

そんな幼少の記憶に思いを馳せながら、ガチ公は車窓を虚ろな目で眺めていました。

「人は何故、成功すると大都会へ出て行こうとするのだワン?」

ガチ公は都会の人ごみが大嫌いでした。

 

そんなガチ公の気持ちとは裏腹に、電車は大都会、大阪梅田に到着しました。

ガチ公は愛する主人の為、嫌いな人ごみをかき分け、目的のパン屋さんに無事たどり着いたのでした。

f:id:gatthi:20220131195148j:plainROUTE271

この名前を見て、国道271号線にあるお店なのかと勘違いする人が多いようですが、そうではありません。「船井さん」のお店なので「271」なのです。

行列が1日中絶えないお店なので、看板の上に時計があります。この時計を見て、自分がどれだけ並んでいたのかを知ることができるのです。

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ガチ公が着いたのはこの時間でした。まだ11時の開店まで40分以上あります。

しかし・・・・・

もう既に10人程の人々が並んでいました。

並び方も決められています。

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ガチ公も列に並びました。この日の気温はかなり低く、震えながらひたすら待ちました。でも忠犬の名をほしいままにする彼にとって、これぐらいの我慢は主人の為と思えば些細なことだったのです。

とは言え、徐々にガチ公の体は白くまアイスのように冷たくなってきました。

すると店員さんが外へ出て来て、天からの贈り物を並んでいる人々に配り始めたではありませんか!

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「暖かいワン!」

ガチ公はお店側の気配りに感謝しました。

そしてこのカイロのおかげで、凍死する前に11時を迎えることができました。

しかしこの「ROUTE271」、小さな小さなお店なのに加えて、ガラスのショーケースから推しパンを指名する「対面販売」なので、お客さん一人が買い終えるまでに結構な時間がかかります。しかも一度に入れるのは3、4人が限度です。

だからガチ公が入店できるまでにはまだまだ時間がかかりました。

 

そしてやっと次にガチ公が入れる所まで順番が回ってきました。

 

ところがその時、恐ろしいことが起きたのです!

 

ガチ公の後ろに並んでいた女性が、ガチ公を押しのけんばかりに身を乗り出し、首を長く伸ばして店内のショーケースを物色し始めたのです。

 

「むむっ!?出たな、妖怪ろくろ首!!」

 

でもガチ公は吠えませんでした。

入店する前に少しでも買うパンを決めておきたいという、ろくろ首さんの気持ちが痛いほど理解できたからです。

しかし順番までは譲れません。

遂にガチ公はお店の中へ足を踏み入れました。

 

忠犬ガチ公、一世一代の怒涛の注文が幕を開けました。

 

ROUTE271には、「ビッグ3」と呼ばれる大人気のパンがあります。

・タイ風焼きそばパン

・エビチリサンド

・プレミアム玉子サンド

この3つを同時に購入しようと思えば、開店直後じゃないと難しいでしょう。

ガチ公はまず、この「ビッグ3」を探しました。そしてこんな時だけ鋭くなる眼光で瞬く間にエビチリサンドと玉子サンドを発見し、焼きそばパンを奥で作っているのを見越して、まずこの3種類を注文しました。

ワンワンワン!

その後は流れるような、それはそれは見事な注文っぷりでした。

感性の赴くまま、次々と注文を畳みかけるその姿は、猛々しい野生の狼のようにも見えました。

f:id:gatthi:20220201201748j:plain大量のパンを仕入れ、お店を出たのは並び始めてからちょうど1時間後でした。

その頃には、お店の前には万里の長城のような行列ができていました。

f:id:gatthi:20220201202121j:plainその後、ガチ公は寄り道を一切せず、一目散に主人の待つ家へと急ぎ帰りました。

梅田での滞在時間、わずか1時間半。その動き、正に閃光の如し。

 

「ただいまワン!」

家に帰るとまず、命がけで得た戦利品をテーブルの上に並べてみました。

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明らかに買い過ぎムードが漂っています。

まずは主人のもとへ「タイ風焼きそばパン」「クリームパン」を献上しました。

重大な使命を果たした忠犬ガチ公。

その後は、自分好みのパンを次々と平らげました。

それでは、ガチ公が選んだ「ROUTE271コレクション」を少しだけ覗いてみましょう。

 

まずは「ビッグ3」。

f:id:gatthi:20220202203219j:plainタイ風焼きそばパン

ROUTE271不動の人気No.1!中のスパイシーな焼きそばが抜群の美味しさです。

このお店の特徴として、「惣菜パンの圧倒的なクオリティの高さ」があります。

中の具だけでも、そのままレストランで出せる程のレベルです。

それを美味しいパンで挟んでいるのですから、凄い物になるのは当然でしょう。具が多過ぎてエビが挟んでもらえず、ラッシュ時の電車に乗り損なったサラリーマンのようになっています。

 

f:id:gatthi:20220202204342j:plainプレミアム玉子サンド

まるでマリトッツォが惣菜パンに変異したような、衝撃映像パンです。

恐るべき量の玉子が投入されています。

最近やたらと「ハード系」という言葉がもてはやされていますが、ROUTE271のパンは「ハミダシ系」が幅を利かせています。

それにしてもこのパンははみ出すにも程があります。モッチモチのパンと玉子が相性抜群で、玉子に溺れる幸せを感じることができます。

 

f:id:gatthi:20220202205636j:plainエビチリサンド

もちろんこれも大幅にはみ出しています。焼きそばパンと双璧をなす、大人気のパンです。中でプリっぷりのエビが大渋滞しています。もはやパンの具ではありません。

完全に常軌を逸しています。プリっぷりのモッチモチで危険な病みつき度です。

 

以上が「ビッグ3」と呼ばれるパンですが、これらに共通するのは「普通のパンにはない食べ応え」です。少食の人ならどれか一つだけでお腹いっぱいになることでしょう。

だから1人分を購入する時は、どれか1つだけにしておきましょう。

 

しかしビッグ3以外にも主役級のパンがまだまだ豊富にあるのがROUTE271の恐ろしい所です。

魅惑の甘~いパンもたくさんあります。

 

f:id:gatthi:20220203205424j:plainクリームパン

強烈な個性を放つ他のパンに比べ、なんという地味なパンでしょう。

名前も極めて普通です。しかしこれが意外と隠れた名優だったりします。

中には一風変わったオレンジ色のカスタードクリームが入っており、ちょっと他のお店では味わえないクリームパンに仕上がっています。

豊中・スリールさんのクリームパンと肩を並べる美味しさです。

 

f:id:gatthi:20220203210019j:plainクロワッサン・アラクレーム

「そのお店が名店かどうかはクロワッサンを食べろ」という古代からの格言があるように、やはりここのクロワッサンも美味しいです。挟んであるクリームはもちろんはみ出しまくっています。ここにもオレンジ色のカスタードクリームが投入されています。

これを食べ終わったガチ公の口の周りには、白、茶、オレンジ色と様々な色の物が付着しており、何を食べたらそうなるのか、というぐらいの壮絶な状態になっていました。

 

f:id:gatthi:20220203211023j:plainハチミツパン

これも非常にシンプルな一品です。食パンにハチミツが表からも裏からもしみ込んでおり、「浪速のプーさん」の異名を取るガチ公にはたまらないパンでした。

 

では最後に、ガチ公お勧めのラスボスをご覧ください。

f:id:gatthi:20220204194925j:plain厚焼き玉子とイカと豚肉のソース焼きそばサンド

「ハミダシ系」の王者、遂に登場!サンドと言っていますが全然挟めていません。

組体操のピラミッドが崩れた時のようなビジュアルです。焼きそばが痛がっています。

往年のTⅤアニメ「タイガーマスク」で、ずっと3人の覆面男がラスボスだと思っていたら実はそのバックに真のラスボスがいたという、あの展開を思い起こさせます。

「ビッグ3」を遥かにしのぐインパクト。ガチ公はこれが最も気に入ったようです。

普通の惣菜パンであれば、先に中の具がなくなるのが普通ですが、これは先にパンがなくなり、具だけが残ってしまうという異次元のパンです。

 

以上、忠犬ガチ公プロデュース「ROUTE271コレクション」でした。

 

ROUTE271にはまだまだ強烈な個性を放つパンがたくさんあります。

「また並びに行くワン。」

ガチ公は決意を新たに、さらに他のパンを食べ続けたのでした。

その様子を、扉の隙間からがっち夫人が優しい眼差しで見つめていました。

 

「ガチ公、自分のパンを買いに行ったのね。私を口実に。」

 

それからもガチ公は大好きなパンに囲まれ、幸せに暮らしましたとさ。

(つづく)

 

続くの!?

 

今日の1曲:Led Zeppelin「Black Dog」