こんにちは。
僕の名前はパンダバウム。
名前通りのバウムクーヘンだよ。
三色団子が大好物なんだ。
生まれてこの方、この枠から外に出たことがないんだ。
ずっと僕の人生、そういうものだと思ってた。
でも最近、他の生き方もあるんじゃないかって思えてきたんだ。
だから思い切って外に出てみることにしたよ。
えいっ!
ズズズッ・・・。
すぽんっ!!
じゃあね、僕は僕らしい人生を探しに行くよ。
枠バウム君、今までありがとう。
その後、彼がどうなったのか。それは誰にもわかりません。
近くの村に、がっちというあだ名の、それはそれは変った男が住んでいました。
休みの日になると町へ出かけ、美味しいものを求めてさまよっているので、村の人たちとはほとんど交流がありません。
村人が彼と顔を合わすのは年一回、自治会費の集金の時だけでした。
そして今年もその日が訪れ、当番の村人が自治会費を集めようと各家庭をまわっていました。
がっちの家の近くに来た時、その村人は思いました。
「またあいつか・・・。集金には素直に応じてくれるんだけど、いつもヘヴィメタルを大音量で聴いているから、呼び鈴を鳴らしてもなかなか気づかないんだよな~。ああ、めんどくさい。」
ところががっち家の前にいざ来てみると、その日は珍しくとても静かでした。
「留守かな?」
でも部屋の電気はついているし、換気扇からはコーヒーの匂いがしてきました。
「今日はすぐに出てきそうだな。」
村人がそう思い、呼び鈴を鳴らそうとしたその時でした。
家の中から、がっちが何やらつぶやいているのが聞こえてきました。
「この変わった形のバウムクーヘン、めっちゃコーヒーに合うわ~。」
枠だけになったバウムクーヘンもまた、味わい深い。