がっちの航海日誌

日々の些細な出来事を、無理やり掘り下げます。

喫茶Yの喜劇

最近、食欲の衰えを顕著に感じるようになりました。

精神年齢に全く成長が見られないので、年齢を重ねていることに気づいていなかったのですが、もう50代。衰えて当然ですが、まだそれを認めたくない自分がいます。

 

「もしも今、あのお店の食事を完食出来たら、まだまだ僕はナウいヤングだ。」

 

と危険な事を考えてしまいました。

行くか・・・久しぶりに。

遂に「あのお店」をブログでご紹介する時が来ました。

名実ともにナウいヤングとしてフィーバーしていた頃、何度か訪れた喫茶店がありました。

モーニングもランチもとにかく凄い量で、当時、大食いを誇っていた僕もなんとかギリギリで食べきった記憶があります。

今回はモーニングに行って来ました。

 

モーニングといえば最近はもっぱら岐阜県南部、美濃の国のモーニングにハマっており、もう大阪ではモーニングに行く気がしなくなっていたのですが、本日訪れるお店は別格。

大阪で美濃モーニングに唯一対抗できると言われている、

「大阪最強」のモーニングなのです。

 

今回、久々に「あのお店」へ行くにあたりパートナーに指名したのは、レコード発掘調査の相棒でもある、ポール・ウェダー卿

卿はいつも妻が寝ている間に1人でモーニングへ出かけ、美濃モーニングも経験済みという、申し分のないキャリアを誇る男。

ただ、卿は僕より3つも年上。

あのモーニングを完食できるのか、不安視する声も上がりましたが、卿にとっても今後のモーニング人生を左右する重要な局面であるのは間違いありません。

 

土曜日の朝、50代のおっさん2人が早朝に大阪梅田駅で待ち合わせをして、何十年ぶりかに「あのお店」へと向かいました。

大阪市北区豊崎

梅田の中心部からはかなり北に外れた、特に何もない所。

知らぬ間に「若者の街」となっていた中崎町から少し北へ行った所に突然現れる、地味な外観の喫茶店

開店時間は8時。開店より少し前に着いたのですが、お店の前には既に並んでいる人々がいました。

もう最近はメディアの取材を受け付けていないというこのお店ですが、SNSの時代、根強い人気があるようです。

 

喫茶Y

来てしまった・・・。もう後には引き下がれません。

 

開店!

 

Yママが登場し、懐かしのごちゃごちゃとした店内へ案内されました。

入口手前のスペースには、これからの激闘を予感させる大量の卵が入ったバケツが。

 

昔から変わらないガチャガチャ感に妙な安心感を感じます。

テーブル席とカウンター席がありますが、カウンターの上には大量のトーストを初めとするいろんな物が置かれており、実質座れるのはテーブル席のみになります。

そしてママがおしぼりと水を各席に配り出すのですが、配り方が雑なのも昔のままでした(笑)。

でもこれはただ雑なだけじゃないのです。1人で切り盛りされているので、とにかく待たせずに早く料理を提供してあげたい、というYママの優しさが現れた雑さなんですよ、たぶん。

 

さて、モーニングですが、

8種類あります。

価格帯は600円~1000円と、メニューだけを見ると安く感じませんが、内容を見ればいかにこの値段設定が破格なのかを思い知ることになります。

今日僕らが注文したのは、1番人気の「サンドウィッチ」

以前は卵の量を1個~10個まで選べたのですが、昨今の価格高騰の波がこのお店にも押し寄せていると見えて、選べなくなっていました。

というか、卵10個が入ったサンドウィッチなんて異常ですけどね(笑)。

 

まずは先鋒として珈琲が来ました。

この日はとても暑かったのでアイスコーヒーにしましたが、この珈琲を飲むだけで、喫茶Yがただの量が多いだけのお店ではない、というのがはっきりとわかります。

とても美味しい本格派コーヒー。ミルクも市販のパックの物ではなく、瓶に入ったもの。

見てください、この美しい模様が入った氷を。

世間によくあるドカ盛りのお店というと、質よりも量な所が多いですが、Yは違います。

とにかく一つ一つの食材に「良い物を使っている」のがよくわかります。

そしてこのコーヒー、なんと11時まで何度おかわりしてもOK!という太っ腹具合(ごはんモーニングを除く)。

このクオリティのコーヒーがおかわり自由なんて、凄すぎます。

 

ちなみにメニューを見るとコーヒー以外にもいろいろと書いてありますが、他の物を注文しようとすると、

「ごめん、コーヒーか紅茶にしてくれへん?1人やから手回らんねん。」

と断られますので、コーヒーか紅茶を注文しましょう(笑)。

はっきりと物を言うYママ。

見ていて気持ちがいいです。

 

あと、満席の時にお客さんがお店へ入って来ると、

「今満席やから入れません。」

と恐ろしくぶっきらぼうな言い方で突き放します。

初めてYを訪れた人は、少しビビッてしまうかもしれません。

感じが悪いな、と思うかもしれません。

でも安心してください。

外でしばらく待って席が空いた時には、とても優しく迎え入れてくれます。

Yママは典型的な「ザ・大阪」のオカン。

断る時はズバッと断りますが、待ってくれた事に対しては溢れんばかりの感謝の気持ちで対応します。このツンデレ具合が痛快なんです。

最近、「カスハラ」という言葉が問題になっていますが、喫茶Yではそんな言葉は存在しません。

そういうクレーマー的な客がいたら、「あんた、もう帰って」とバッサリ一刀両断することでしょう。

 

さて、変わらぬYママの人柄を観察しているうちに、僕らのサンドウィッチが完成。

遂に戦いの火ぶたが切って落とされました。

 

ドッカーン!!

で、出た!写真ではイマイチわかりにくいですが、凄い圧です。

ウェダー卿はこれが2人分だと思ったみたいで、これがもう1皿運ばれて来た時はのけぞっていました。

パンの分厚さもさることながら、中の具材も凄まじい量です。

玉子もハムもレタスも、多過ぎて段々と広がってきています。

卵の数を選べなくなったと言いましたが、見た感じ、恐らく5~6個は使っているのではないでしょうか?

パンは1斤まるごと使われている感じです。

3切れありますが、1切れでも他のお店なら「デカっ!」というレベルです。

つまりこれを完食するということは、朝・昼・晩の3食分を朝に食べてしまうのと同じぐらいのレベルなのです。

サンドウィッチとはいいますが、挟んだまま手で食べるのは不可能。

ナイフとフォークで切りながら食べますが、それでも途中からぐっちゃぐちゃになります。

ただ・・・・・

 

美味いっ!!

 

先程も言いましたが、喫茶Yはただのデカ盛りのお店にあらず。

このサンドウィッチにも、良質な食材がふんだんに使われており、とにかく美味しいのです。

だからどんどん食べ進みます。

なかなか減りませんが(笑)。

20代の自分をイメージし、ひたすら食べ続け、

遂に最後の一切れに!

ここでコーヒーが底をついたので、おかわりをすることに。

ところでこの少し前、店内に変化がありました。

 

「喫茶Y名物」の動きが始まったのです。

 

1人の男性がお店に入ってきました。店内は満席です。でもママは追い出さず、普通に会話を始めました。

すると男性はおもむろに厨房に入り、コップに水を入れて飲み始めたのです。

その後、座れないはずのカウンター席へ座り、ママと話の続きを始めたのですが、お客さんが食べ終わって席を立つと、食器を片付け始めました。

そして新しいお客さんが入って来ると、注文を聞き始めたのです。

 

え?店員さん??でもその割には寛いでるぞ。

そう、これこそがY名物の「客か店員かわからない常連の人」なのです。

1人で切り盛りするYママをサポートするべく、常連さんが自然な動きで手伝い始めるのが、喫茶Yの日常風景。そのおかげでお店が回っていると言っても過言ではありません。

なのでコーヒーをおかわりする時は、僕はカウンターまでグラスを持って行きます。

するとYママの口から衝撃の一言が。

 

「足りてる?もっとトースト焼こか?」

 

無理やて!!

 

ママは一体、人間の胃袋のサイズをどれくらいだと思っているのでしょうか!?

足りてないわけがありません。

しかしこれも、必ずお腹いっぱいになって帰ってほしい、というママの優しさです。

おかわりのコーヒーは、常連さんが入れてくれました(笑)。

 

そして遂に・・・

 

完食!!

もちろん、バナナとゼリーもいただきました。

ウェダー卿も無事にサンドウィッチを完食。ただ、もうバナナとゼリーは無理だということなので、僕がいただきました(す、凄いぞ俺)。

 

ごちそうさまでした!

僕らはまだまだナウいヤングです!

 

しかし自分がまだ若いと確認できたことよりも、喫茶Yがほとんど何も変わっていなかったことの方が嬉しかったです。

帰り際、僕たちはYママへの感謝を込めて、自分たちの食器をまとめてカウンターへ運んだのですが、その時、ママが満面の笑みで、

 

「ありがとう!また絶対来てね~!」

 

と手を振って見送ってくれました。

 

うん、また絶対来るよ!(体調がいい時に)

お店を出て、シュレックのようなお腹になった僕たちは、梅田でレコード発掘調査を行った後、

 

普通にお昼ご飯を食べて帰りました。

 

俺たち、まだまだ喫茶Yなんてペロリだぜ!!

 

ウソです。もう限界です。

 

今日の1曲:ブレッド&バター「あの頃のまま」