大阪が誇る日本一長いアーケード型商店街、「天神橋筋商店街」。
ここの印象といえば、
「人が多くて活気がある」
「安くて美味い店が多い」
「何でも売っている」
「空き店舗が少ない」
という声がある一方、
「地面を見ると汚い」
「人ごみに自転車が突っ込んでくる」
「いい店が多い分、うさん臭い店も多い」
「怪しい人間がよく歩いている」
というネガティブなイメージもあり、良くも悪くも「ザ・大阪」な商店街です。
しかしこのガチャガチャとした商店街の中に、
「江戸時代の古い町並み」
が存在するのを皆さんはご存じでしょうか?
その町並みがあるのは、商店街の最北端に位置する、大阪メトロ「天神橋筋六丁目」駅、通称「天六(てんろく)」。
僕は3歳~8歳まで天六のスイミングスクールに通っていたので、幼き日の思い出が色濃く残っている場所でもあります。
当時まだ現存していた駅前に広がる「闇市」で買い食いした1枚100円のお好み焼きの味は今もはっきりと覚えています。
この天神橋筋商店街のスタート地点ともいうべき天六に、商店街のイメージとはかけ離れた情緒あふれる町並みが広がっているというのです。
天六を知っている人であればあるほど信じがたい情報ですが、真偽を確かめるべく、
調査員を派遣しました。
天六駅の3番出口を上がって行くと、
現れるこの平凡な建物こそが異空間への入り口。
エレベーターでこのビルの8階へと上がります。
すると受付のような所に出て来ます。
「あー、君。私は浪花考古学協会から派遣されたガッチー・ジョーンズという者なんだが、調査の為に中へ入らせてもらうよ。」
「そちらで入場券をお買い求めください。」
「はい。」
600円の入場券を買って中に入ると、更に上の階へと誘導されます。
エスカレーターで10階へ。
今のところ、古い町並みとは無縁の世界です。
ちなみに今から40数年前、天六駅のエスカレーターの横のスペースを滑り台として遊びまくっている少年がいた、という都市伝説があります。
その少年は僕です。
エスカレーターの横の壁に、昔っぽい装飾が施されており、目的地に近づいていることを予感させます。
そして10階に到着すると、そこには驚くべき光景が広がっていました。
むむっ!?
窓の外に瓦屋根が見えています。
なんじゃこりゃ~っ!?
私は今、一体どこにいるのでしょうか!?
怪しげな宗教団体の仕業か??
確かにビルの10階へ上って来たはずなのですが、目の前には日本の古い町並み。
眼下には人が歩いているのが見えます。服装からして現代の人々です。
僕も降りてみよう。
階段で9階に降り、「木戸門」からこの怪しい町並みに足を踏み入れました。
ここは大坂町三丁目。
とても風情のある町並みが広がっています。
町には色々なお店があります。
味のあるロッカーだなあ。後でお金が返ってくるタイプだといいなあ。
今の銭湯とは全然違う、不思議な造りになっています。
うーん入り方がわからない。
フィギュアショップ(人形屋)
当時の人気キャラが勢ぞろいです(知らんけど)。
ハロウィン用のコスプレグッズも充実。
こちらも人気キャラばかりです(知らんけど)。
このお面を付けて渋谷を歩けば、職務質問されることうけあいです。
新世界では特に何も言われないでしょう。
ツタヤ(本屋)
本屋さんはいつの時代もテンションが上がります。
子供の頃はよく近所の本屋さんで立ち読みをしていました。
そして散々長時間の立ち読みをしたあげく、本屋さんのご主人に「おっちゃん、今何時?」と聞いて激怒されていた少年がいました(僕ではありません)。
本だけでなく、アイドルのブロマイドも売っています。
写真のブロマイドよりも凝っていていいですね~。
ユニクロ(呉服屋)
エアリズムの在庫が充実。
オーダーメイドにも対応しています。
ドラッグストア(薬屋)
そこら中に「ウルユス」という名前が見えますが、これは当時大ヒットした万能薬の商品名だそうです。
しかし実際には大した処方をされた薬ではなく、押しの強い販売戦略が実を結んだだけなのかもしれません。
ウルユスの効能が書いてありますが、読めません。
お店の中にも巨大なウルユスの看板。
ネズミ講なみの押しの強さです。買うまで帰らせてもらえなかったのかもしれません。
あかんで、ネズミ講は。友達失うよ。
お店を回っているうちに、
夕方になりました。
これがこの施設の凄いところで、時間の経過と共に夜になっていくのです。
ビルの中に居るというのが信じられなくなります。
程なくして・・・
夜になりました。
恐っ!
小さい子供にはただの肝試しです。
すれ違う人々がゾンビに見えました。ほんまに暗いです。実際には写真よりも暗いです。
朝が来ました。
なんかホッとしました。明るさによって建物の見え方も全然違います。
なかなか秀逸な演出です。600円なのに頑張ってるなあ。
もうちょっとだけ散歩します。
ワンルーム賃貸物件(貸し家)
狭っ!
1年中、自然に換気されている感じです。
システムキッチン完備です。美味しいご飯が炊けそうだなあ。
意味もなく歩いているだけでも楽しいです。
とても丁寧に作り込んであります。
安易なネーミングには目をつぶってあげて下さい。
気が付けば立ち読みと同じぐらい長い時間を過ごしていました。
もっと居たかったのですが、再び夜が訪れるのを恐れて、町を出ました。
ありがとう、大坂町三丁目!
しかしこの施設はこれだけで終わりではありません。
階段で8階に降りると、
明治~平成までの「近代大阪」の展示があります。
様々な資料やジオラマなどで「ちょっと前」の大阪の暮らしを垣間見ることが出来ます。
現在では排気ガスにまみれたコンクリートジャングルになっている「堺筋」ですが、昔はこんなに味のある通りだったんですね。
「天神祭り」は今とさほど変わらない気がしますが、一番衝撃的だったのが、
城北バス住宅
戦後すぐの復興期、バスを住宅にして、町が作られていたそうです。
不便な事も多そうですが、それ以上に、めちゃめちゃ楽しそうやんけ!と思いました。
子供の頃にここで過ごしたかったなあ。
今は人が多過ぎて大嫌いな「心斎橋筋商店街」もこの風情。
あの「新世界」ですらこの風情。
ええなあ昔の大阪!
と今の大阪が嫌いな事を再認識して、施設を後にしました。
「大阪くらしの今昔館」、入場料が600円とは思えない素晴らしい施設でした。
僕のように、いい加減なことをつぶやきながらウロウロしているだけでも十分楽しめましたが、真剣に昔の大阪を学びたい勤勉な人にとっては、パラダイスだと思いますよ。
オススメなのは、入口でレンタル出来る「音声ガイド」。
イヤホンを耳につけ、各ポイントでボタンを押せば、人間国宝の落語家、故・桂米朝さんの味わい深い声で詳細な説明をしてくれるので、ボーッと歩くよりも格段に楽しく散策が出来ます。
地元大阪の人も、観光客の方も、是非一度「昔の大阪へ行く」という非日常な目的を持って天神橋筋商店街を訪れてみて下さい。
でもやっぱりこの商店街に来たなら、
ビフテキのHibio
グルメは外せません。
こちらのHibioさんは吉本の超大物芸人も足繁く通う洋食の名店。
昔の大阪もええけど、
やっぱり今の食事がええなあ。
花より団子、学びより食欲。
今日の1曲:サディスティック・ミカ・バンド「タイムマシンにおねがい」