少年時代、「キン肉マン」というプロレス漫画に夢中になりました。
漫画に出て来るキャラクター達を模った消しゴム人形、通称「キン消し」は子供たちの間で大ブレイクし、レアなキン消しをたくさん保有するのがステイタスでした。
なけなしの小遣いを握りしめてはガチャポンのハンドルを捻り、出て来たカプセルの中身に一喜一憂したもんです。
同級生の間では、「ウォーズマン」、「ロビンマスク」、「バッファローマン」といったビジュアルのカッコいいキャラが人気を博していましたが、僕のお気に入りはそっちの方向ではありませんでした。
超人委員会の「委員長(ハラボテ・マッスル)」、試合の実況を担当していた「アデランスの中野さん」、キン肉マンの宿敵「キン骨マン」の舎弟「イワオ」などの全然カッコよくない、脇役中の脇役の消しゴムを大事にしていました。
その脇役コレクションの中で一際お気に入りだったのが、キン肉マンの従者である、
漫才でいうところの「ツッコミ役」に徹し、ひたすら健気にキン肉スグルをサポートする実直な姿勢に心を打たれていたのです。
その「ミートくん」の名を冠するお食事処が大阪にあるというので、行って来ました。
情報を下さったのは、仕事上の同業他社の方で、長年お世話になっているKさん。
50代後半になってもその色艶は衰えることを知らず、未だに浮名を流し続けているところから「長柄の石田純一」の異名を取るナイスミドルです。
浮名を流した分、星の数ほどの飲食店の情報を保有されており、その中で最近気になっている「ミートくん」というお店があるらしいのです。
お店の場所は大阪きっての活気あふれる「天満エリア」。
かの「天神橋筋商店街」を擁する一大グルメ王国です。
KさんとJR天満駅で待ち合わせをして一緒に行くことにしました。
ただ困ったのが、開店時間。
かなり行列が出来るお店だということなので、開店時間前に到着したかったのですが、情報が錯綜していました。
ある所では「11時半」、ある所では「11時過ぎ」と書いてあり、どれが正解なのかわかりません。
一応正式な開店時間は「11時半」のようなので、11時過ぎにはお店へ到着するように待ち合わせをしました。
11時に合流し、お店へ向かって歩き出しました。
お店は天神橋筋よりも西側の、わかりにく~い細い路地を入った所にあったのですが、着いてみてビックリ。
めちゃめちゃ並んでるやんけ!!
しかもお店の中を覗いてみると、もう既に食べている人がいました。
今日は11時に開けたようです。気まぐれオレンジロードか。
席はカウンター6席のみ。
外に並んでいるのは20人ぐらい。
・・・何分待つの、これ。4巡目ぐらいには入れるでしょうか。
並びました。そして待ちました。
並んでいる人々を観察しながら。
かなり量の多い定食が出て来ると聞いていたので、むさ苦しい野郎どもがずらっと並んでいると予想していたのですが、意外と女子も並んでいます。
僕らの前には、かなりシュッとした女性が1人で並んでいました。
なんかカッコいいなあ。
それにしてもなかなか一巡目の人が出て来ません。
Kさんと談笑しながら待っていると、横からの熱い視線を感じました。
ちょうど行列の向かいにお好み焼き屋さんがあるのですが、全然お客さんが入っていませんでした。
明らかにそのお店からの視線を感じるのです。
「そろそろ並ぶのをあきらめる頃か」
一瞬、僕と目が合った店員さんの目がそう語っていました。
しかし1人の脱落者も出ず、行列はどんどん伸びていきました。
45分ぐらい経ったころ、やっとお店の入り口付近まで来ました。
これは店名ではありません。
しかしこれで豚肉とご飯を食べるお店だというのはわかりました。
店名はこっちの看板に書いてあります。
どこに??
真ん中です。
ミートくんの間借り食堂
周りのステッカー、うざっ!はがしたろか。
名前の通り、こちらのお店は、夜だけ開いている居酒屋さんの場所を、お昼だけ間借りして営業しています。
家賃を安く抑えることができる上に、お昼しか食べれないという希少価値を生み出してそれが行列に繋がるという、悪魔の商売方法です。
その罠にまんまと陥り、休日のお昼にひたすら並ぶおっさん2匹。
しかしもうすぐ入店出来るポールポジションにたどり着いたことで、おっさん2匹はご機嫌でした。
一番外側の席は、行列からの血走った視線をもろに浴びることになるので、避けたいところですが・・・。
待つこと1時間、遂に入店の時!
入ってまず出迎えてくれたのは、
そして後ろに立っているのは超人カレクック。
インド人の頭の上にカレーライスが載っているという衝撃のビジュアルで、一部のマニアの間では人気のあったレスラーです。
何故カレクックがここに選ばれているのかはわかりません。
まあ、僕も嫌いじゃないのですが。
後ろのボードに書いてあるメニューは夜の居酒屋のものです。
このお店のメニューは一択!
チャーシューエッグ定食のみ!わかりやすい!
あとは・ライス大盛り
・目玉焼き追加
の3つのトッピングメニューがあります。
僕とKさんはライス大盛りと目玉焼き追加を選択。
そして懸念されていた「一番外側の席問題」ですが、その席には前述のカッコいいお姉さんがドカッと陣取り、並んでいる人々の視線から僕らを守ってくれました。
しかもお姉さんのライスは大盛り。
かっちょええ~!
さて、1時間も並ぶ定食とは一体何者なのだ!?
来た来たー!
スープが。
なかなか濃厚なスープ。美味しいけど、まあ普通だ。
今度こそ来た来たー!
ズドーン!!
うおおっ!カロリー高そう!
そして、
ドカーン!!
器よりも上の部分が多過ぎて、しっかりと手を添えないとゴロンッと転がります。
この定食は・・・なかなかヤバいぞ。
チャーシューエッグ定食
恐ろしく分厚いチャーシューが睨みを利かせる、カロリーモンスター。
あまりの迫力にたじろいでしまいますが、これが食べてみると異様に柔らかい!!
箸でスパスパと切れるので、楽しさのあまり切り過ぎてしまい、ぐちゃぐちゃになりました。
めちゃめちゃ美味しいです。
やはり並ぶお店には理由がありますね。
ごちそうさまでした!
すっかり満腹になったおっさん2匹。
この後、長柄の石田純一さんは天満市場へ。
僕は歩いて梅田へ向かいました。
そして歩きながらふと、さっきのお店でミートくんの後ろに立っていた超人カレクックのキン消し人形にまつわる、過去の嫌な記憶がよみがえってきました。
当時、ガチャポンを捻ると、やたらとカレクックが出て来たのです。
「またカレクックか・・・。」
途方にくれた僕は、とんでもない凶行に出ました。
「消しゴムというからには、字を消せるに違いない。」
そう思った僕は、
カレクックを消しゴムとして使ってしまったのです。
頭の上に載っているカレーライスの部分でゴシゴシと擦ったのはいいのですが、
もともと字を消す為に作られた消しゴムではないので、なかなか字が消えませんでした。
それでも躍起になってゴシゴシとやっているうちに、紙が破れてしまいましたが、それでもしつこく擦っていると、遂にカレーライスの部分が完全に無くなり、
ただのインド人の人形になってしまいました。
「あの時はごめんやで、カレクック。」
謎の懺悔をするハメになった、夏の終わりの一コマでした。
今日の1曲:TVアニメ「キン肉マン」ED曲
「肉・2×9・Rock'n Roll」