4年に一度の祭典、サッカーワールドカップ。
初戦のドイツに勝ってから、急に盛り上がり出した都合のいい日本国民を尻目に、選手たちは命がけの戦いを続け、本日遂にスペインまでも撃破。
かっちょええ~!
今日早めに起きた甲斐がありました。
ところで今回のワールドカップで度々話題になっているのが、カタール国民の貴族っぷり。
オイルマネーをバックに裕福な生活をしている様子が、連日テレビを通して伝わってきています。
やはり中東の産油国はセレブ度が群を抜いているようです。
一方、我が日本では、年々貧富の格差が広がっているように思えます。
町を走る自動車を見ると、超高級車か、大衆車しか走っていません。
ほんの少し昔にはもうちょっと真ん中の、ちょっと頑張れば庶民にも買えそうな高級車があったはずなのですが、今は高級車といえば全く手の届かないものばかり。
どんどん両極化が進んでいるように思えます。
最近、それを更に実感させることがありました。
場所は大阪梅田の「阪神百貨店」。
建て替え工事を終え、阪急百貨店にも見劣りしない立派な百貨店に生まれ変わったのは記憶に新しいですが、9階にある大食堂「阪神フードホール」に、日本の貧富の差を肌で感じさせるものを見てしまったのです。
ここは百貨店版の、いわゆる「フードコート」です。
食べたいお店に並び、ブザーが鳴ったら取りに行き、自分で確保した席で食べる、というお馴染みの流れです。
でもここは大人気なので、ゴールデンタイムに行くとどのお店にも行列が出来ており、席を確保するのも困難な時があります。
そんな時、フードホールの一角に、何やらVIPな匂いのする場所を見つけました。
「阪神プレミアムルーム」と名付けられたその空間。
観察していると、コンシェルジュっぽい服装の人が料理の載ったワゴンを押して入って行きました。
しばらくすると、空のワゴンを押して出て来ました。
そしてフードホールの中の、あるお店の横につけました。
するとまあ、なんということでしょう!
健気に並んでいる人々を無視して、真っ先にそのワゴンへ料理が運ばれたではありませんか!
そしてそのワゴンは、再びプレミアムルームの中へ消えて行きました。
あの中には王様が居るに違いない!
しかし調べてみると、その中には王様ではなく、
「並ばずに食べる権利をお金で買った人々」がいることが判明しました。
プレミアムルームには4人掛けの豪華なソファ席がいくつかあり、1,000円払えば90分間、そのソファ席を占有できるらしいのです。
ただ占有できるだけではありません。
フードホールのどのお店のメニューも注文可能で、しかもコンシェルジュっぽいスタッフの方が代わりに注文してワゴンで席まで運んでくれるのです。
まあ要するに、
「並びたくない」、「運びたくない」、「いろんなお店のものが食べたい」、
「豪華な席で食べたい」、というわがままなセレブ達がお金に物を言わせて贅の限りを尽くす為に作られた、恐るべき空間なのです。
ふざけんなよ、ワレ。
こんなもんがあるからセレブが調子乗るんだよ。
そこで今回、僕が労働者階級代表として貴族を装い、潜入捜査をして来ました。
慣れないスマホを駆使し、何とかプレミアムルームの予約に成功しました。
日本の格差を助長する「疑惑の部屋」へ、サムライ労働者がっち、決死の潜入開始!
阪神フードホール
いつもならサバンナの平原を闊歩するハイエナのように、空いている席をギラギラと血走った眼で物色しますが、今日は王族として来ているので、堂々たる足取りで各お店の前を通過しました。
そして問題の現場へ到着。
阪神プレミアムルーム
「予約していたガッチ・ペペロンチーニだが。」
「お待ちしておりました、ペペロンチーニ公爵閣下。こちらへどうぞ。」
その時、問題の「あれ」が目に入りました。
こ、これだ。このワゴンこそが、並んでいる庶民を大名行列のように蹴散らし、プレミアムルームから注文された料理をさっさと運んで行くという、貧富の差の象徴。
今日は僕の注文した料理がこれに載せられ、運ばれるのだ。許せ、庶民たちよ!
半円状の壁に取り囲まれた半個室空間が並んでいます。
この4人がけのテーブルにつき1,000円なので、4人で来れば1人250円で王族になれる権利を得ることができます。
それではペペ公爵狂乱の晩餐会、開宴!
メニューです。
分厚っっ!!
百科事典か。
ここにフードホール全てのお店のメニューが載っており、売り切れていなければ全て注文可能。
「ボタニカリー」は今日も順調に売り切れていました。
しかしカレーは庶民の食べ物。
今日は王族に相応しい料理を注文しなければなりません。
つまり、僕が普段口にすることのない料理です。
そこで目を付けたのが、
フレンチ。
絶対食べない。いや、食べに行けない。テーブルマナーもわからない。
フードホール内に1軒、フレンチのお店が入っていました。
大阪市福島区の人気フレンチレストラン「LIAISON(リエゾン)」。
本店の方へはとてもじゃないが行けません。
ランチでも10,000円近くする超高級店です。
そんな敷居の高いお店が普通にフードホールに出店しているのが阪神百貨店の凄いところです。
フードホール向けのメニューとして、フランス料理のコースが気軽に食べれるように、と弁当箱のようなものにギュっといろいろな料理が凝縮されたスペシャルメニューがあるらしいのです。
それを思い切って注文しました。
食べ慣れているセレブっぽい表情を浮かべながら。
しばらく優雅にノンアルコールビールを飲んでいると、召使い(店員さん)が例のワゴンで料理を運んできてくれました。
Haco(ハコ)
この箱の中に、豪華なフレンチのコースが詰まっているらしい。
3520円。
どこが気軽やねん!
高いわ。のり弁何個買えるねん。
・・・いやいや、私の名はペペロンチーニ公爵。そんな事は一切考えまい。
開けてみます。
ぱかっ。
うわっ。眩しっ。目がチカチカする。
どこから食べたらいいのか全くわかりません。
お品書きが添えられていました。
プレッセ?マトロート??
全然わかりません。
とりあえず、どれが前菜なのかを探しました。
うん、これっぽい。
どれが何かはわかりませんが、左上の黒いプチプチはわかります。
キャビアです。出た!セレブの象徴。
知っているものから食べる習性のあるペペ公爵、まずキャビアを口に運びました。
こ、これは・・・。
たらこの方が美味いな。
キャビアなんて、希少だから値段が高くて、チヤホヤされてるだけじゃないのか?
本当にキャビアの味が好きで食べてる人はいるのか?
と公爵閣下はひがみ根性丸出しで思いました。
でも、下の烏賊はコリッコリでとても美味しかったです。
他の3品も何を食べているのかはわかりませんでしたが、非常に上品な良い味付けでした。
次はサラダを。
鯖と焼き茄子のサラダ
福井県民の血が色濃く流れるペペ公爵は鯖にはうるさいのですが、満足の一品でした。
サラダと言っても、普通の感じではないですね。これがフレンチの世界なのか。
ここで問題が発生しました。
フォークで食事をすることに疲れてきたのです。食べにくい。
箸はないのか箸はー!
あるんか~い。
ないんかと思ったらあるんか~い。
エプロンの中に隠されていました。これからメインを食べるにあたっての強力な援軍です。
メインはこの可愛らしいパンと一緒にいただきます。
普段はこの10倍以上のパンを摂取するペペ公爵。
気をつけないと一瞬で食べてしまいます。
メインはこれ。名前忘れました。柔らかい肉です。
これは凄く美味しかった。
うーん、やっぱり凄いな!いい物をいただきました。
と悦に浸っていたら、
「ラストオーダーのお時間になります。」
早っっ!
90分制なので1時間ほどでラストオーダーになってしまいます。
ちょっと短いですね~。
慌ててラスト注文をしました。
こちらも気軽にお店へは行けない中華料理の名店「空心」の絶品麻婆豆腐。
と春巻き。
この春巻きも普段食べているものとは全然違いました。
ごちそうさまでした!
「お会計のお時間になります。」
この号令と同時に、公爵の爵位ははく奪され、労働者としての現実の世界に戻されました。
そして庶民たちが集うフードホールへと出て行きました。
この時、いつもの居場所へ帰ってきた安堵感に包まれていました。
がっちよ、君にプレミアムルームは似合わない!(ほっとけ~)
では、本日の捜査報告を。
キャビアより、たらこが恋しい、梅田の夜。
焼たらこおにぎりが無性に食べたくなった、帰りの阪急電車。
今日の1曲:John Lennon「労働者階級の英雄」