近頃の大阪梅田の開発競争にはちょっと引くものがあります。
ほんの10年前と比べても、街の風景が一変してしまいました。特にグランフロント大阪が開業してからは、恐ろしく開発が加速したような気がします。
しばらく梅田へ行ってない人が今行くと、自分が今どちらを向いているのかもわからなくなるでしょう。
それは言い換えれば、「昭和の建物や街並み」が次々と失われているということです。
そして最近、また一つの「昭和遺産」が生まれ変わってしまいました。
どれだけ開発が進んでも、大阪梅田には揺るぎない牙城を築いている二大ショッピングモールがあります。
「阪急百貨店」と「阪神百貨店」です。
この両雄への大阪の人々の信頼感は異常です。同じ物を買って来ても、このどちらかの百貨店の紙袋に入っているだけで、もらった人の表情が明るく、穏やかになるのです。
例えば、うまい棒を阪急百貨店の紙袋にしこたま詰めて渡したとしましょう。
するともらった人の顔は、まるで命を助けてもらったかのような、感謝に満ち溢れた表情になるでしょう。もう中身の値段なんてどうでもよくなるのです。
「どこで買ったか」なのです。
「わあー!阪急やん、これ~!」と必ず言います。
これからも、この牙城が崩されることはないでしょう。
しかしこの両雄、キャラは全く違います。
「高級な百貨店の代名詞」であり、府民のステイタスでもある憧れの阪急百貨店に対し、
「百貨店なのに地元のデパートのような」庶民的な雰囲気のある阪神百貨店。
僕は圧倒的に阪神派です。
何年か前にリニューアルされてお洒落になってしまった地下の「スナックパーク」。
リニューアルされる前のこの場所はジャージで行っても違和感のないジャンキーな空間でした。名物「イカ焼き」を買った人々が、そこらじゅうの階段におもむろに座って食べているハードな風景。
ここ、ほんまに百貨店か!?
と目を疑ってしまう光景でした。でもその自由な空気感こそが阪神百貨店の真骨頂。
僕もよく階段に座って食べました。
そして阪神に惹かれる理由がそのキャッチフレーズ。
「食の阪神」
まあ食べ物売り場が充実しています。
子供の頃、親について行っては試食をしまくっていました。今はもう試食ができる所はほとんどなくなりましたが、当時はどのお店も試食を出していたのです。
なので僕はちょっと人とは違うキャッチフレーズで呼んでいました。
「試食の阪神」
「大人は子供に上目遣いでおねだりされると断りにくい」という心理を利用して、本能の赴くままに試食をし続けました。
恐ろしい子供だ・・・。あの時逮捕していれば、こんな怪しいブログが世に放たれることはなかったでしょう。
そして屋上にあった遊園地。大都会のど真ん中のビルの上にまさかの遊園地。
当時は嬉々としてここで遊んでいましたが、今思えば親は僕をドッグラン感覚でここへ放ち、その間に自由に買い物を楽しんでいたのでしょう。
そんな思い出いっぱいの阪神百貨店。
昭和臭全開の魅惑の阪神百貨店が・・・・・
建て替えられてしまいました。
地下のスナックパークがリニューアルされた時、これから徐々に建て替えられていくと聞き、落胆しましたが、ついに最近、新しい阪神百貨店の全貌が見えて来ました。
まだ全面開業ではありませんが、もうほとんど出来上がっていると言ってもいいでしょう。
これが生まれ変わった阪神百貨店の姿です。
うわああっっっ!誰やーお前ー!
ナウい!ナウ過ぎる!!フィーバーしてる。バッチグー。
今までは向かいにある阪急百貨店の圧倒的なオーラに対し、いなた~い感じのゆるさで対抗していましたが、遂に見た目でも阪急と張り合えるようになりました。
もう屋上の遊園地の姿はどこにも見えません。これからはどこで遊べばいいんだ?
まだ遊ぶ気か!?48歳なのに。
さて、昭和臭を一掃し、令和の百貨店として生まれ変わった阪神百貨店。
さみしく思ったのは最初だけでした。
「食の阪神」がめちゃめちゃパワーアップしています。
地下2階から1階までが、「食」で埋め尽くされています。
まず地下2階には、新たに出来た「阪神バル横丁」。
ここはかなりの名店が集結しています。
地下1階には、毎度おなじみ「スナックパーク」と「阪神食品館」。
もう試食をしていた頃の面影はありませんが、あの熱気は変わらずです。
そして1階。百貨店で1階といえば、バッグや高級ブランドのお店が並んでいるのが普通ですが、阪神は違います。
高級ブランドなんて誰が置いてやるか、と言わんばかりに「食」で満ち溢れています。
パン狂の僕にはたまらない「パン テラス」、全国のお菓子が1個から買える「おやつ テラス」、毎回1つのテーマに絞ったイベントが開かれる「食祭 テラス」など、ひたすら食べ物攻めが続きます。
でも僕が最近ハマっているのは、
9階に誕生した
「阪神大食堂」です。
9階にはレストラン街があります。ここも名だたるお店が名を連ねていますが、注目はそこに隣接している「フードホール」。
いわゆる「フードコート」というやつですが、阪神のはそんじょそこらのフードコートとは次元が違います。
こういう所でありがちな有名なチェーン店の姿は皆無で、地元大阪の名店がずらりと並んでいます。
その中で「おっ!このお店が入ったのか!」と驚いたのが、
ボタニカリー
群雄割拠の大阪スパイスカレー界で、No.1の呼び声高い名店です。
あまりにも行列が長すぎて整理券を配るようになったという恐るべきお店です。
その伝説のカレーがフードコートで気軽に食べれるなんて、夢の世界です。
さっそく食べようと近づくと・・・
まだ16時なのに売り切れの札が・・・。
早っ!並んでないからおかしいとは思ってました。皆さん、よく知ってますね~。
しかしあきらめきれない僕は、こう考えました。
鍋の底に、ちょっとだけ残ってないかな?
往生際の悪さ全開で「もう売り切れですか?残念やわ~」と店員さんに言うと、
「あとお2人分ぐらいならまだいけますよ。」
これが後に言う「阪神大食堂の奇跡」です。
鍋の底から救い出された奇跡のカレー。
美味っっっ!!
店員さん、粋な計らいありがとうございました!
でも今こうして思い出していると、あれは後で店員さんが食べるまかないの分だったんじゃないかと思えてきました。そうだったらほんまにごめんなさい・・・。
その日はそれで満足して帰ったのですが、他にも凄いお店が入っていたことが後で判明しました。
だからまた行きました。
そのお店とは、
空心(くうしん)
大阪市西区新町にある、「予約が取れないお店」として有名な本格中華料理のお店です。本店が現在、移転準備中だということで、今ここの料理を味わえるのは阪神百貨店だけということになります。
こんな一流店の料理がフードコートで味わえる幸せ。
なかなか一人では行きにくい本格中華のお店ですが、ここならいつでも、気軽に来れますね。
この背中を向いている方、中華料理の世界大会で3位になった凄い方だそうです。
そう言われたら背中からオーラが出ているような、出ていないような・・・。
フードホールは11時に開店なのですが、ボタニカリーさんやこの空心さんには、それより少し前に行かないと、あっと言う間に行列が出来てしまいます。
僕も10時45分に到着し、まず席を確保しました。
ここが僕のいつもの特等席です。他の席と違い、隣接しているテーブルがないので、寛げます。
注文しに行ってから席に戻り、ブザーが鳴るのを待ちます。これは他のフードコートと同じです。
ブルブルブルゥァァァッッ!!!
僕はこのブザーが鳴りだす瞬間が苦手です。鳴るとわかって構えていても毎回ビックリします。もう少し優しく教えてほしいです。
「料理が出来たよ、ハニー」みたいな感じで。
期待に胸を膨らませて取りに行きました。
それでは驚愕の空心ワールドをご覧くださいませ!
麻婆豆腐
山椒の香りが鼻腔を突き抜ける、芸術的な一皿。辛いんだけどたまらなく美味しい。
ご飯が止まらなくなる奴です。異次元の麻婆豆腐。これをご飯なしで食べた自分を褒めてあげたいです。幸せの我慢大会でした。
鯛上湯担々飯
メニューを見てこの名前をさらっと言える人はほとんどいないでしょう。
でも安心してください。適当に「たい」とか「たん」とかを連続で言っておけば注文が通ります。
これは阪神限定メニューだそうで、食べ方の説明書が付いています。
まずポットの湯を上からかけます。そしてかき混ぜてそのまま食べます。
非常に上品な優しいお味です。凄くダシが効いていて美味しいです。鯛が非常にリッチです。
半分ほど食べたら、担々醤を投入!すると・・・
一気にビジュアルも味も激変!優しかった大和なでしこが自己主張の強い中国の女性に豹変してしまいました。いきなり飛んできたカウンターパンチ。
しかしこのパンチが実に心地よく、誰もがドМになることでしょう。美味いっ!
空心名物 よだれ鶏
名前がなんか嫌ですが、お味は抜群です。お酒を飲む人にはたまらないでしょうね。
そして刺激的な食世界を優しく締めくくってくれるのがこの一品。
ホワイト黒ごま団子
締めに相応しい極上のデザートです。
カリッカリ、モッチモチの団子の中からジュワ~ッと溢れ出す暖かい黒ごま。
ハッピーエンドのアクション映画を観た後のような気持ちになりました。
気分爽快!ごちそうさまでした!
ところが・・・
僕の座っている席は、半円型になっているので、端っこに座っていると逆側の端の席がどうしても視界に入って来るのです。
その時僕の視界に入って来たのは、それはそれは美味しそうなハンバーガーでした。
隣の芝生は青く・・・・・
隣のハンバーガーは黄金色に見えました。
その後阪神を出て、ブラブラと梅田を徘徊しているうちに、16時になりました。
すると何ということでしょう!
僕は無意識のうちに阪神フードホールへ戻って来ていたのです!
タブロ・ラチェルバ
このハンバーガーも美味いなあ、おい!
阪神大食堂、バンザーイ!!
こうして昭和のおっさんが令和に染まってゆく・・・・・。
今日の1曲:Bob Dylan「時代は変る」