い~しや~きいも~、いも~ ♫
子供の頃、遊んでいる時によく聞こえてきた美しいメロディーです。
味のある男性ボーカルのバックに流れる「ポーっ」という高音。
最後の「いも~」の部分はいるのか?という疑問を感じながら、羨望のまなざしでその魅力的な車を見送っていました。
見送るしかなかったのです。
石焼き芋は駄菓子のように気軽に買える値段ではなく、高嶺の花でした。
一部の貴族家庭の子が親と一緒に車を止めて買っているのを、ただただ見ているしかできませんでした。
そして現代。今では「キッチンカー」と呼ばれる移動しながら車内で調理をし、その場で食を提供する車は当たり前となりました。
最近は石焼き芋のメロディーはあまり聞こえてこなくなりましたが、「キッチンカーのレジェンド」として今も各地を走行しているのでしょう。
僕はこの石焼き芋に対する幼少のトラウマから、キッチンカーを目にすると気後れしてしまい、素直に買うことができないのです。
しかしその長年のトラウマを払拭する絶好の機会がやって来ました。
情報屋Mさんより、タレコミが入って来たのです。
なんと味自慢のキッチンカーが一堂に会し順位を競い合うという、
「キッチンカーグランプリ」なるものが開催されるというのです!
しかも会場となるのが、僕にはなじみの深い大阪府高槻市にある、
安満遺跡公園。
これは行くしかない。
大人となり、堂々とキッチンカーで注文する成長した姿を見てもらうのだ。
誰に?
石焼き芋のおっちゃんに。
ところが僕はいきなり失態を犯してしまいました。
出発が遅れ、グランプリの投票締め切りのギリギリの時間に会場入りしてしまったのです。
安満遺跡公園
入口から会場内を覗いてみると、凄い数の人々がいました。
ううっ。屋外とは言え、嫌いな人ごみだ。どうしたものか。
でも、楽しそうだ。
でも、感染はしたくない。
この時僕の脳裏に、一人の偉大なプロボクサーの勇姿がよぎりました。
アントニオ猪木との異種格闘技戦でも有名な、ボクシング界のレジェンドです。
僕は彼のボクシングスタイルに、このイベントを攻略する糸口を見出しました。
蝶のように舞い、蜂のように刺す
この有名なフレーズを胸に刻み、入場しました。
ここからの僕の華麗な動きは、正に「浪花のモハメド・アリ」と呼ぶに相応しいものでした。
蝶のように人々の間をくぐり抜け、蜂のように鋭く狙いすまして注文しました。
それにしても、今のキッチンカーはお洒落です。もう石焼き芋のイメージではありません。
みつばちガッチは会場内を飛び回り、次々と食べ物を仕入れました。
さて、それをどこで食べるかですが、この公園で人が密集しているのはイベント会場だけです。少し歩けば一気に人の気配が遠ざかります。
孤高のベンチを発見!ここで審査をすることにしました。
次々とカロリーを気にせず食べていきましたが、僕のグランプリはこちらのお店でした。
知多牛バーガー
知多牛?聞いたことないなあ。でも僕はある1点に惹かれ、購入を決意しました。
飛騨牛と母音が同じだ。
同じ東海地方だから、たぶん兄弟なんだろう。
じゃあ間違いなく美味しいだろう。
この狂信的とも言える飛騨牛への愛情が、いい方向へ作用しました。
めちゃめちゃ美味いやんけ!!
凄く肉の味がしました。こんなにしっかりと肉の味がするハンバーガーはなかなかありません。やるな、知多牛。これが絶対グランプリや!
車もグランプリです。
しかし夢中になって食べている間に、
投票の締め切り時間はとっくに過ぎていました。
・・・・・まあええわ。とりあえずグランプリの発表を待とう。
そして運命の結果発表の時間が来ました。
司会のお姉さんの声に力がみなぎります。
「第一回キッチンカーグランプリ。本日のグランプリは、○○○さんです!!」
誰も聞いていませんでした。
あ、あれ!?皆さん興味ないの??僕ら以外、全く反応なしです。
・・・お、おい貴様ら。
司会のお姉さんに謝れー!!!
大丈夫。僕らはちゃんと聞いてたよ、お姉さん。
でも、結局どのお店がグランプリだったのかはよくわかりませんでした。
まあ食べたものが美味しかったらいいじゃないか。
気持ちのいい公園で、見た目も楽しいキッチンカーに囲まれ、美味しいものが食べれて、とてもいい時間を過ごせました。今のキッチンカーってレベル高いんですね~。
石焼き芋のトラウマも、何となく解消されたような気がします。
ごちそうさまでした!
しかしこうして写真で見ると、
茶色いものしか食べてないな・・・。
カロリーモンスターはもれなく茶色です。
今日の1曲:水木一郎「グランプリの鷹」