(前回からの続き)
身分違いだとは理解しながらも、勇気を出してやって来たサロン・デュ・ショコラ。世界屈指の高級チョコレートとの戦いを終え、僕は満足感と罪悪感、そして新しい世界を垣間見た興奮に包まれていた。もう財布の中は火だるまだったのでこれ以上戦うのは困難だったが、せっかく雨の降りしきる中京都まで来たのだから、ともう一度会場内をぐるっと一周してみた。全然名前はわからないが、美味しそうで芸術的な見た目のチョコレートがまだまだ他にもたくさんあるのが見えた。
しかしお店の名前が覚えにくい。カタカナで長い上に途中で「ラ」とか「デュ」とか「ドゥ」とかが入るので、余計に覚えにくいのだ。全部「チョコ屋ケンちゃん」とか「チョコ太郎」みたいな名前にしてくれないだろうか。
心地よい余韻に浸りながら会場を後にしたが、出口付近で気になる看板が目に入った。
この会場の一つ上の階、11階のレストラン街にあるカフェで、サロン・デュ・ショコラで購入したチョコを持ち込んで写真撮影ができるという。僕はすぐにインスタ女子たちが群がってバシャバシャと撮りまくっている光景を想像した。
地獄絵図だ。恐ろしい。そんな場面に遭遇したら気を失ってしまいそうだ。
しかしもうすぐお昼時なので、とりあえず11階には登ってみた。するとエスカレーターを降りたすぐの所に問題のカフェがさっそく現れたではないか。
神戸カプチーノ倶楽部
お店の前にも先程の看板があった。かなりの押しの強さを感じる。
怖いもの見たさでお店の中を覗いてみたら、あまり人はおらず、ガラガラだった。看板に書いてある「専用ランチョンマットで撮影しよう」という言葉も気になる。カフェだが軽食も食べれるようだ。
仕方あるまい。ここで食事をいただくとしよう。京都にある「神戸カプチーノ倶楽部」で大阪のおっさんが食事をする。奇妙な三都物語だ。
ビーフシチューのセットをいただいた。明らかに僕にとっては量が足りないが、今日は家に帰ってから戦利品のチョコレートを食べるのは目に見えている。我慢しよう。肉がゴロゴロと入っていてとても美味しかった。
そして食後、周りの目を気にしながら撮影用ランチョンマットを広げ、緊張しながらチョコを一つ取り出し、撮影した。すると・・・・・
た、楽しいじゃないか。
この専用ランチョンマットをテーブル上に敷き、
こんな感じでチョコを載せて写真を撮るのである。また、
こんな撮影用の舞台も用意してあり、大女優にスポットを当てるが如くチョコに光を当てての撮影もできるのだ。
こんな感じで。
うひゃひゃ~っっ!!楽しーっ!!
失礼。思わず取り乱してしまった。申し訳ない。
そこにはインスタ女子など1人もおらず、ブログおじさんが狂喜乱舞しながら写真を撮りまくっているという異様な光景が展開されていた。もう僕にはインスタ女子たちのことをとやかく言う資格はない。
この後、帰路についた。外はまだ冷たい雨が降り続いていた。
それでは、サロン・デュ・ショコラ京都会場で出会った、珠玉のチョコレートの数々をご覧いただこう。
「杏と塩」 from洋菓子マウンテン
今回最大の目的。チョコマスターもっくんの激推しチョコだ。まるで宝石でも入っているかのような箱だ。
ハイチューぐらいの大きさのものが5粒。このハイチュー1粒がのり弁当よりも・・・いや、ダメだ。それを考えては食べれない。断面がどうなっているのか気になり、半分に切ってみたら、つるっとした何もない綺麗な面だった。しかしこの異様につるっとした感じに何とも言えないオーラを感じる。思い切って口に入れてみる。
何だこれは!?
美味し過ぎる。これが本物のチョコレートというものなのか。そして表面の塩が見事なサポートをしてくれている。これで世界の頂点を獲ったというのもうなずける。
こんな凄いものを自分のような人間が口にしても良いのか。罪の意識に苛まれるが、もう遅い。食べてしまった。次々いってしまおう。
「タルトレット・ショコラ」 fromセバスチャン・ブイエ
小さなチョコタルトだと思っていたこの商品、タルトに似せたチョコレートだった。
左からイチゴ、抹茶、オレンジ、シトロン。僕は抹茶とシトロンをいただいた。チョコはもちろん美味しいが、上のドライフルーツや中のナッツが絶妙で、非常に凝った一品だった。職人魂を感じる一品だ。
これも1粒でのり弁当が・・・もうやめるのだ、貴様。
「ルージュ・ア・レーブル」 fromセバスチャン・ブイエ
同じくブイエさんの口紅チョコレート。これは木いちご味だ。妻へのプレゼントなので僕は食べるわけにはいかない。だから食べた感想は言えないが、一体どうやって食べるのだろうか?
チョコには見えない。絶対見えない。
開けてみよう。
くるっ。
リアル過ぎるだろう、これは。かじって食べるのはもったいない気がする。かと言って口紅のようにこれを塗ってから唇をなめるというわけにもいかないだろう。妻はどうするのか、また聞いてみよう。間違ってもバレンタインの日に女子から男子へ贈ってはいけない代物だ。男がこれを食べる姿は見たくない。
「ショコラ・カセ」 fromショコラトゥリー・ドゥ・マリュー
雰囲気のある缶に大きな板チョコのかけらが入っている。左のピンク色はビター、ミルク、ブロンドの3種詰め合わせ。右はミルクのみだ。
珍しいのがブロンド。いわゆるホワイトチョコレートだが、色がベージュなのだ。
・・・だから?いや、ちょっと気になっただけだ。忘れていただこう。
これは大きいので食べ応えがあり、ローストナッツもゴロゴロと入っていた。チョコ自体も凄く美味しかった。最初この形を見た時は、運んでいる途中で割れたものを集めたのかと思っていたが、わざとこういう形に割ってあるようだ。こちら側の世界はまだまだ知らない事だらけである。
「パロットロリポップ」 fromマレーン・クーチャンス
5羽の南国の鳥の1羽、初期XのTOSHIを思わせるヴィジュアル系チョコだ。見本の物はもっとカラフルだったのだが、これは色を塗り忘れたのか、輸送中に色褪せたのかわからないがあまり鮮やかではなかった。しかしこの造形は素晴らしい。
「チョコ色に~、染~まった~、こ~の俺を~♫ 食べに来る~奴は~もういない~♩」
いや、そんなことはない。僕が食べに行こう。見た目だけではない、味の方も素晴らしかった。ミルクチョコレートで、裏側にはナッツが散りばめられていた。少し甘すぎる気もするが、まあ好みの問題だろう。
「ミルクジャム」 fromパティスリー・アキト
最後は、チョコではないのに何故かサロン・デュ・ショコラで出品されていたこのジャム。しかしもっくんのお薦めだったので買って来た。
これは単独では食べれない。バゲットに塗って食べようと思い、強力な援軍を要請した。
「バゲット」 fromル・シュクレクール岸部店
至高の逸品である。援軍としてこれ以上のものはないだろう。
ふたを開けるとワックスのようにツヤツヤだった。これは美味そうだ。
想像以上に美味しかった。僕の好きなミルクキャラメルのような味がした。今度は食パンに塗ってみようと思った。
以上が戦利品の全てだ。
今回、思い切って乗り込んでみたが、行って良かったと思っている。来年も是非行ってみたい。こんな素晴らしいイベントを教えてくれたもっくんには感謝している。だが来年も行けるかどうかは、福沢先生のご機嫌次第だ。頑張って働かなければ。
外を見ると、まだしつこく雨が降っていた。結局今日は1度もやみ間がなくうっとしい1日だったが、夢のような1日でもあった。来年もまた、同じ夢を見に行こう。
今日の戦利品は週末の楽しみとして置いておき、ちょっとずつ食べようと思う。
そして翌日、仕事中に立ち寄ったコンビニでふとお菓子の棚を見ると、
ブラックサンダーが僕を呼んでいた。
呼ばれるがまま手に取ったサンちゃんを握りしめ、レジで精算金額を見た時、我が家に帰って来たような安堵感に包まれたのだった。やはり僕は、そちら側の人間なのだ。
明日のお昼はのり弁当にしよう。
今日の1曲:X「Endless Rain」