がっちの航海日誌

日々の些細な出来事を、無理やり掘り下げます。

小浜の至宝、鯖の浜焼き

福井県小浜市(おばまし)。

 

福井県北西部、若狭湾に面した港町であり、京都への鯖街道の起点でもある、海産物王国。

また、由緒ある寺社仏閣が数多く点在し、「若狭の小京都」と呼ばれることもあります。

しかしこの「小京都」という呼び名に真っ向から異を唱える人物がいました。

 

小浜市「小浜国」と呼び、自らがその小浜国の王族だと信じて疑わない大阪在住の男。

 

サバスッキャネン・ガッチ氏(自称 小浜国王子・49歳)。

 

確かにガッチ家代々のお墓は小浜市のお寺にあり、先祖はかなり有力な侍であったらしいので、世間も嘘だとは言い切れない部分がありました。

しかし「祖父が小浜市の出身だっただけだろう」という見方が世論の大半を占めていました。

 

その”自称王子”サバスッキャネンは、「小京都」という呼び方が嫌いで仕方がありませんでした。

 

「何故日本人は、いつも京都が全ての基準であるかのような言い方をするのだ?

私にしてみれば、京都の方こそが『山あいの大小浜』と呼ばれてしかるべきだと思うぞ。」

 

と誰にも共感されない持論をいつも無駄に熱く語り、周囲を困惑させていました。

 

そして先日、サバスッキャネン王子が、4年振りに小浜国へ入ったという情報があまり信用できない筋から入って来ました。

「コロナ禍だから国へ帰れない」と言い訳を繰り返し、4年もの間、お墓参りへ行かなかった罰当たりなプリンスが、遂に今年は小浜国へ帰国したのでした。

 

早朝に大阪を出発したプリンスは、高速代をケチり、下道で小浜を目指しました。

能勢から北上し、大好きな京都府南丹市を経由して約3時間。

遂に4年振りの帰国を果たしました。

まずは先祖代々のお墓へ直行。

ご先祖様との感動の再会を喜び、ロウソクを忘れるという失態を犯しながらも、

無事にお墓参りを終えました。

生まれてからずっと、毎年欠かした事がなかったお墓参り。

4年も空いたのは初めてでしたが、お墓の前に立つと不思議と久しぶりな感じがせず、

昨日も来たかのような気持ちになったプリンスでした。

 

「この4年間、私の気持ちは常に小浜と共にあったのだ。」

 

と最近、岐阜にばかり行っていた男とは思えないセリフを口走りながら、小浜の街並みを感慨深そうに眺めていました。

 

まだお昼まで時間があったので、プリンスは小浜の「御意見番」へ挨拶に行きました。

道の駅 若狭おばま

4年前に訪れた時には小さな施設だったのが、とても立派な施設に生まれ変わっていて、プリンスは驚きました。

御意見番が外で出迎えてくれました。

 

さばトラななちゃん

「おう、やっと来たか王子!まあ鯖でも食っていけや。」

小浜市の公式キャラクター、さばトラななちゃん。

この木彫りのななちゃんはお寺を守る仁王像のように道の駅を警護しています。

ななちゃんが持つ鯖のしっぽに緑色の生物の姿を確認。

 

口は悪いがカエルには好かれるななちゃん。

 

道の駅内部へ。

お土産屋さんも充実。

小浜ではUFOキャッチャーまでもが鯖のぬいぐるみです。

小浜の子供たちは鯖のぬいぐるみを抱き枕にしているとか、していないとか。

 

そうこうしているうちに、お昼の時間が近づいてきました。

 

小浜市内には、海産物を中心に魅惑のランチ処が多数ありますが、観光客の数に対し、

まだまだお店が少ないのが現状です。

その為、休日になると、ガイドブックに載っているようなお店は大抵行列ができています。

しかし庶民の行列に並ぶなど、プリンスは王族としてのプライドが許しません。

 

極上の鯖料理を求め、「完全予約制」のお店へと向かいました。

 

食べるのは勿論、

 

「鯖の浜焼き

 

小浜が誇る至高の魚料理。

これを超える魚料理はこの世には存在しない、とまで言われている(王子が言っている)神がかり的な逸品。

小浜市内では色々なお店で買うことの出来る「鯖の浜焼きですが、そのほとんどがテイクアウトのみ。

代表格は「朽木屋」「田村長」といった老舗の魚屋さんですが、やはりどちらもテイクアウトのみ。

なかなかお店ではこれを食べられません。

でもプリンスは知っていました。

小浜市内の非常にマニアックな場所に、焼きたての鯖の浜焼きを提供するお店があることを。

 

その名は「中村商店」

 

観光の中心地からは少し離れた静かな住宅街に佇む魚屋さん。

ここではお店へ行く前に行う、独特のルールがあります。

 

「訪問する30分前に、お店へ電話を入れる」

 

というルールです。

鯖の浜焼きは焼くのに時間がかかります。

だから電話が入ると同時に火を入れ、訪れた時に待たせることなく、焼きたてホヤホヤの浜焼きを食べてほしい、という店主「ひっちゃん」の熱い想いがそこには込められているのです。

 

電話を入れないと予約が入っていることを忘れてしまうから・・・ということでは決してありません・・・と思います。

 

さて、プリンスもこのルールに従い、電話を入れ、ぴったり30分後にお店に到着しました。

中村商店

プリンスは王族の威厳を見せつけ、お店の真ん前に堂々と高級軽リムジンを停めました。

というかこちらのお店に駐車場はないので、ここが定位置なのです。

 

中にイートインスペースがあることを全く感じさせない店構え。

この一見さんを寄せ付けないオーラも魅力的です。

 

ところが一歩お店へ足を踏み入れると、一気にお洒落な空間が・・・

 

そんなわけあるかい。

 

お洒落という言葉など一切存在しない、純度100%の魚屋さん空間。

写真の左の方に写っている作業台のような机で料理をいただきます。

ワイルドやろ~?

これがいいんですよ。

お店の奥から香ばしい浜焼きの匂いが立ちのぼってきました。

 

中村商店は、ななちゃんのオススメのお店でもあります。

 

そして地産地消をすすめるお店でもあります。

地産地消は大賛成です。

 

それではお待たせいたしました。

小浜国サバスッキャネン・ガッチ王子主催、めくるめく豪華絢爛な昼餐会を開幕いたします!

 

焼サバ定食

出たあっ!

鯖を丸々1匹、太い串で貫いたヴァイオレンスなビジュアル。

ド迫力です。

 

特製の生姜醤油を付けて食べます。

いただきます!

 

時間をかけてじっくりと焼き上げているので、皮はパリッ、身はふっくら。

半端なく脂がのっています。

小さな骨なんて全然食べれます。プリンスは真ん中の太い骨まで食べようとしましたが、さすがに諦めました。

大きいので食べ応えも抜群です。

プリンスは大阪の鯖専門店で食べた焼きサバを思い出していました。

 

「ふん、よくもあんな小さい鯖で専門店などと言えたものだな。これこそが本物なのだよ。」

 

久しぶりに食べる本場の鯖の浜焼きは、やはり比類なき逸品でした。

 

ごちそうさまでした!

 

博物館の標本!?

または漫画で猫がくわえた魚の骨のようです。

このプリンスの食べっぷりを店主の奥様が絶賛してくれました。

 

その後、しばらく店主ご夫妻と談笑し、世界最高の昼餐会は幕を閉じました。

 

行列に並ぶことなく、貸し切り状態の店内で極上の鯖の浜焼きを静かに食す。

これ以上の贅沢はありません。

 

そしてもう一つ、帰り際に嬉しいことがあります。

料理を食べた時の「若狭塗の箸」。

なんとこれを持ち帰ることが出来るのです。

「やったー!」

プリンスは王族とは思えないぐらい普通に喜びました。

 

皆さまも是非、小浜へお越しの際は中村商店で至高のサバ時間をお過ごしください。

安心してください。

王族でなくても予約出来ますよ!

 

さて、お腹と心が満たされたプリンスは、いつも寄るおやつ処へと向かいました。

 

伊勢屋

小浜が誇る超有名和菓子店。

店内で名物「くずまんじゅう」をいただきます。

涼しい~。

ここも貸し切りです。

王族がいるからか誰も入ってきません(た、たまたまでは・・・)。

くず饅頭

こういうものが名物だというのは、水が綺麗な証拠です。

葛、水、餡が一体となった素晴らしいお菓子です。

脂ののったサバの後に食べると、さっぱりして最高ですよ。

「我が小浜国に栄光あれ!」

 

こうしてプリンスは4年振りの帰国を終え、大阪へ戻っていく・・・はずが、

何故か東の方へと向かい始めました。

 

「さあ、勝山~越前大野へ行くぞ!」

 

こ、これはもしかして・・・・・!?

 

「王子、本当の目的は福井県東部への旅行だったのでは?」

 

「まさか旅行のついでに小浜へ寄ったんじゃないでしょうね?」

 

「王子、一言お願いします!」

 

ブオーン!!

 

マスコミを蹴散らし、疾風の如く小浜国を出国したプリンスでした。

 

今日の1曲:Manowar「Blood Of The Kings」