目に見えない所で我々人類を守って下さっている神々の存在。
人は脆く、壊れやすい。とても自分達の力だけでは生きていけません。
生き物には複数の守護神がついているといいます。
実際に、守護神は数々の疫病や災難から人々を守って下さっています。
特に鼻腔の入り口。人間の体内へ常に門が開いている状態の鼻腔には強力な守護神が鎮座し、空気中のゴミやウイルスという悪魔の侵入へ常に目を光らせています。
彼の名は「守護神ポワルネ」(俗名:鼻毛)。
彼の守護なしでは人々の健康などありえません。
かつては「鼻毛、鼻毛」と蔑まされ、疎まれていた彼が何故、急に神として崇められるようになったのか。
その経緯はこちらの記事をご覧ください。
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しかし守護神も日々のメンテナンスが欠かせません。
そこでポワルネ様の専属鼻容師として抜擢されたのが、
名刀、関孫六。
世界に誇る刃物の町、岐阜県関市出身の名刀。
別名:回転式鼻毛カッター。
カチャカチャ、と鋭く先端の刃が回転し、森林伐採のように切り倒していくその勇姿にポワルネ様も虜になっていました。
ただ、彼には唯一の欠点がありました。
巨大なポワルネ様に対峙した時、1対1での勝負に弱かったのです。
ピンポイントで1本の毛に狙いをつけるのが苦手でした。
そこでその弱点をカバーする為に、助手として昔ながらの鼻毛バサミを従えて戦いに臨んでいました。
ところがそれに対して、ポワルネ様から思わぬクレームが出たのです。
ポワルネ「う~ん。なんかこう、最後の仕上がりが納得いかないんだよね。」
ポワルネ様は多感なお年頃でした。
人からは見えない所でも、整った、美しい形でいたかったのです。
使い古された安物の鼻毛バサミでは、その高度な要求に応えるのは不可能でした。
ポワルネ様からのクレームの件で、僕は関孫六から相談を受けました。
孫六「がっち殿、お願いがございます。我が故郷、関市に拙者の一人息子がおります。
彼を大阪へ連れて来てもらえませんか。」
がっち「ええで。ちょうど3連休やしな。ちょっと遠いけど、息子さんに会って来るわ。」
こうして僕は重大な使命を受け、久々に岐阜の地へと降り立ったのです。
旅行に・・・いや、孫六の息子さんに会いに。
久しぶりの飛騨の国は、いつも通り僕を温かく迎えてくれました。
めちゃめちゃ寒かったですが・・・。
そして3日間散々遊んだあげく・・・
遂に目的地に到着しました。
帰り道に。
東海北陸自動車道 関サービスエリア
たまたまトイレ休憩に寄っただけじゃないのか?という声は一切無視します。
さっそく関孫六ジュニアの捜索を開始しました。
建物に入ると・・・
関孫六だらけ!
さすが本場だ。凄い数の刃物ラインナップです。包丁はもちろん、爪切りや美容器具まで、全てに関孫六の名前が入っています。
どこや?息子は??
「がっちさん、私ですよ!」
むむっ!?
関孫六 プレミアムセーフティ鋏
孫八「初めまして、がっちさん。私が関孫六の息子、関孫八です。」
がっち「そうか、君が。あんまりお父さんと似てないね。」
孫八「はい、よく言われます。でも切れ味は父譲りです。」
がっち「ほな、一緒に大阪に行こか。」
孫八「がっちさん、その前にレジへお願いします。」
がっち「君、まあまあいい値段するね。」
大阪を出発してから3日目。やっと捜索が完了しました。
(いや、だからたまたまトイレ休憩に・・・)
大阪へ帰り、さっそく孫八の実力を試してみました。
鼻毛バサミとは思えないずっしりとした持ち応え。
そして可動させた時のなめらかな動き。
切る前から名刀の匂いがプンプンと漂っていました。
さりげなく刻印された「関孫六」のロゴマークが名刀の証しです。
孫六「ポワルネ様。長男の孫八です。」
孫八「お初にお目にかかります、ポワルネ様。関孫八にございます。」
ポワルネ「早く切ってみて~!」
孫八「はっ。それでは父上が平らに整えた後、私が最後の仕上げにかかりましょう。」
遂に実現した夢の孫六二刀流!
まずは父・孫六がいつものように全体を平らに美しく刈り上げました。
そして息子・孫八が遂に初陣を飾る!
シャキシャキシャキーン!!
凄い切れ味だ!!
狙いすましたポワルネ様を確実に捉え、一刀両断の元に切り捨てます。
信じられない。何という親子だ!
これほど美しく仕上がった鼻腔内は見たことがありません。
ポワルネ様もその仕上がりには大満足です。
恐るべし関一族!
これからは切るのが楽しみになりそうです。
ポワルネ様、早く伸びて下され~!
雨乞いならぬ、鼻乞いをしてしまいそうです。
ところで、思わぬ名刀の登場でお役御免になった鼻毛バサミ。
思い返せば、彼を購入したのは18歳の時でした。
30年も使い続けていたのか・・・!
安かったのに壊れることもなく、不器用ながらも一生懸命ポワルネ様の散髪に心血を注いでくれました。
僕の人生に何が起ころうとも、彼だけは変らずにチョキチョキといつも通りに散髪をしてくれました。
そう思うと急に愛着が沸いてきました。
これは捨てられないな。
これからも、たまには彼に切ってもらおう。
ポワルネ様には内緒で。
孫六二刀流、実は隠れた三刀流。
鼻毛狩りのゾロ。