がっちの航海日誌

日々の些細な出来事を、無理やり掘り下げます。

梅雨の宮島(下)

(前回の続き)

厳島神社と共に世界遺産に登録された神の山、「弥山(みせん)」を目指し、宮島ロープウェーへ向かいました。

その途中に目に入った看板。

暑さにやられていたこともあり、絶景が見える茶屋があるなら行ってみようか、と寄り道することにしました。

しかしちょっと気になったのが、この次に現れた看板。

一番下に小さな文字で、

「これより先はお店になりますので、ご注文をお願いします」

という表示がありました。

よくあるTVのCMで、一番大事なことを一番小さな文字で、よ~く見ないとわからないぐらいに書いてあるというやつ。

あれに似たちょっと嫌な感じがしました。

 

そしてこの予感が、見事に的中しました。

 

階段を登り切り、お店へ足を踏み入れた瞬間、

 

「お二人様ー?どうぞどうぞー。お茶?700円ずつね~。」

 

と凄い勢いでお店のおばちゃんが飛んできて、座らされ、お金を徴収されました。

蜘蛛の巣にかかった獲物を逃すまい、とでもいうような半ば強引な接客。

最初からお茶をいただくつもりで上がってきたし、別に法外な料金をぼったくられたわけではないのですが、あまりの勢いに少しのけぞってしまいました。

 

でもまあ、ここまではまだ許容範囲です。

この程度の勢いのおばちゃんなら、大阪にはたくさん生息しているので免疫はあります。

問題はここからでした。

この茶屋、眼下に大鳥居と海の眺望が開け、確かに素晴らしいロケーションでした。

アイスグリーンティーも美味しくいただきました。

絶景を眺めながら、とてもいい時間を過ごしていました。

 

するとその時、偶然迷い込んだ感じの外国人の女の子が登ってきました。

恐らく先程の看板なんて、見ていないでしょう。

おばちゃんが女の子に気づきました。

 

「ウェルカーム!!」

おばちゃんが今度は英語を駆使して襲いかかりました。

凄まじい勢いです。

 

女の子はびっくりして、慌てて「No、thank you!」と言って退散しました。

 

するとおばちゃんは、逃した獲物に対して腹が立ったのか、その女の子の身体的な特徴を馬鹿にした悪口を、大きな声で、僕らにわざと聞こえるように、言い出しました。

 

僕にはこれがどうしても許せませんでした。

世界中のたくさんある国の中から、日本を旅先に選んでくれた外国の女の子。

その子に対するひど過ぎる仕打ち。

とても不快な気分になりました。

せっかくの絶景が台無しです。

僕らもそそくさと退散しました。

この茶屋で取り憑いた悪霊を振り払うべく、一刻も早く「神の山」へ登らなくては!

 

「早よ行きや。」

鹿さんもエールを送ってくれました。

 

厳島神社周辺の喧騒がウソのような静かな森の中を歩くと、

もうすぐ宮島ロープウェーの乗り場です。

 

宮島ロープウェー「紅葉谷駅」

着いたぞ!すぐに乗ります。

ここからは2つのロープウェーを乗り継いで獅子岩駅」を目指します。

まず最初は4人乗りの小さなロープウェーで。

だんだん視界に瀬戸内海が広がってきました。

エアコンはありませんが、窓からいい風が入ってきます。

途中、何と読むのかわからない駅で次のロープウェーに乗り換えます。

写真を撮るのを忘れましたが、今度はクーラーの効いた大きな車両です。

景色もどんどん良くなってきました。

 

獅子岩

終点の獅子岩駅に到着!

ここにも展望台があるので、ここが山頂だと勘違いする人がいますが、違います。

ここから30分の登山をした先に、頂上があるのです。

さあ、ゆくぞ!神の山の山頂へ!

まあ30分ぐらいで山頂へ行けるなら、と楽勝ムードで登山道へ突入すると・・・

 

めちゃめちゃハードやんけ!!

 

予想外のアップダウンと、岩がむき出しのゴツゴツとした地面。

どこに足を持って行けばいいのかわからない箇所もありました。

しかしこの弥山という山、鞭をビシバシと打って来るかと思えば、間にちゃんと飴を投入してきます。

 

あーもうあかん。しんどい。と思った瞬間、

 

木々の間からチラリと絶景を見せ、それからまた・・・

 

オラオラオラァーッッ!!

 

とハードな道が続き、

 

もうええわ、引き返そうか、と思った瞬間、

 

ええ景色やろ?

 

と険しい道と絶景を交互に放ってきます。

登れば登るほど、どんどん景色が良くなっていくのが如実に感じられるので、歩みを止めることが出来なくなります。

さすが神の山!

人心を完全に掌握しています。

 

そしてやっと、

 

弥山本堂に到着しました!

山頂ではありません。あくまでも本堂です。山頂はまだ先です。

そしてこの本堂の横に、居心地の良さそうなベンチを目ざとく見つけた僕は、遂に切り札を投入しました。

 

いただきまーす!!

あなごめし弁当(by 上野商店)

本当は山登りなんてしたくなかったのに、これを美味しく食べるために山へ登ったのではないか!?

という疑惑が噴出する中、オープン・ザ・蓋!

 

うひゃひゃひゃ~っっっ

 

下から汗だくで登ってくる人々を見下ろしながら、極上のあなごランチです。

もう焼き上がってから随分と時間が経っているのに、何という香ばしさでしょう!

蓋を開けた瞬間にKOされます。

さっぱりとしながらも深い味わい。

箸が凄いスピードで往復します。これは美味しいわー!

もうこの時、茶屋での嫌な記憶は完全に消し飛んでいました。

 

ありがとう、アナゴさん!!

(マスオさんの同僚じゃないよ)

 

ごちそうさまでした。

牡蠣もこれぐらい美味しく食べれたら幸せなのに・・・。

さあ、お腹も精神面も整ったところで、

 

本堂へお参りを。

いや、それを先にやれよ。

 

ここからは、怒涛の進撃でした。

あなごめしでハイオク満タンになったことで、僕の体内のVツインエンジンが火を噴きました。

ガッチー・ダビッドソン、登ります!

 

と、その時!

 

キーン!

こ、この走り方・・・アラレちゃん!?

あれ??またお地蔵さんが現れたぞ。

 

ギュイーン!

地蔵界のジミ・ヘンドリックス降臨。

というかこの界隈、お地蔵さんのキャラが強すぎる。

 

ワオーン!

朽ちた木が狼に見えたのはあなごめしを食べてハイになってたからだと思っていましたが、こうして写真で見てもやっぱり狼でした。

さすが神の山。天然のアートも秀逸です。

 

そしてだんだん、巨大な岩が増えてきました。

でかっ!誰が置いたのこれ。

 

うおおーっ!何だこりゃ。

 

くぐり岩

この巨大な天然の岩の門をくぐれば、頂上はもうすぐです。

ラスボス登場前の緊張感。

 

そしてついに・・・

山頂に到着です!

山頂にはとても快適な展望台があります。

ここの屋上へ登ります。

 

360度の眺望が開けた素晴らしい場所です。

 

うわー・・・

ええ景色やなー。

あの世ってこんな感じ?

がっち49歳、只今臨死体験中。

あかんあかん。この世に戻れなくなるわ。

あの世に連れていかれないように、下の階に降りました。

またこの下の階が、天国の空間でした。

 

靴を脱いで広~い所で体を伸ばせるようになっているのですが、下界とは明らかに質の違う、気持ちのいい風が爽やかに吹き抜け、昇天しそうになりました。

いつまでも居てられるー。

ユニクロの5本指靴下がセクシーです。

 

日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり」

 

伊藤博文さんがそう言ったというのも理解できました。

修学旅行では来れなかった弥山。

38年振りに訪れた宮島で、ここへ登ったことで修学旅行が完成された気がしました。

厳島神社はこの島のほんの入り口だったんですね。

「神の山」と呼ばれる理由がよくわかりました。

 

ずっと居たかったですが、そうもいかないので下界へ降りることにしました。

 

ついさっきまでの山頂の出来事が夢だったかのように、表参道商店街は人で溢れ、街は喧騒に包まれていました。

しかしこれもまた、宮島という観光地の醍醐味。

普段は嫌いな人ごみの中へ飛び込んでいき、

名店藤い屋さんで「もみじ饅頭」その他もろもろを購入し、宮島を離れました。

 

今回の旅行、目的地を広島にして本当に良かったです。

子供の頃には見えなかったもの、逆に子供の頃に見たままの風景が思い出として鮮やかに蘇ったものもあり、何とも言えない感慨深い時間が流れていきました。

次に来るのはいつになるかわかりませんが、必ずまた訪れたいです。

 

ありがとう、宮島!また来ます!

 

フェリーに乗り、遠ざかってゆく大鳥居を眺めながら、何かを忘れているような、そんな気がしていました。

 

ホテルへ着いた時に思い出しました。

 

 

アシカショー観に行くの忘れた。

 

旅行中、雨が降るのを防いでくれたのに、ごめん!

(※個人の思い込みです。)

次に宮島へ来た時は、必ず会いにいくよー!

それまで厳しい訓練に耐えていてね。

(※子供の頃の思い込みです。)

 

以上、大人になれない大人の修学旅行記でした!

またね、広島!大好き💛

 

今日の1曲:Gary Moore「Hiroshima」