会社の同僚に温泉とグルメをこよなく愛する人物がいます。
愛称「ケンさん」。
本名も「ケン」なのですが、少し寡黙な雰囲気で黙々と仕事をこなすところから、高倉健さんのイメージでそう呼ばれているのかもしれません。「浪花の高倉健」と言っても過言ではないでしょう。
・・・いや、やっぱり過言でした。すいません。
そのケンさんからたくさんのグルメ情報をいただいたのですが、なんせ温泉を求めて遠方を飛び回る男。他府県の情報が多く、緊急事態宣言下ではなかなか行けませんでした。
「早くケンさんからのタレコミを、ブログにしたい」と常々思っていました。
するとある日、仕事が最も忙しい朝の時間に、ケンさんが僕の耳元でボソッと一言。
「東大阪に、凄い行列のパン屋さんがありますよ。」
何っ!?パ、パン・・・。このタイミングでぶっこんで来るか!さすがケンさん。
それ以降、仕事が全く手につかなくなったのは言うまでもありません。
そして迎えた週末。もちろん行って来ました。
大阪府東大阪市。「リアル下町ロケット」とでも言うべき日本が世界に誇る技術を持った町工場がたくさんあり、花園ラグビー場のある「ラグビーの聖地」でもあります。「パン」のイメージは全くありません。しかしそこに夢のようなパン王国があるというのです。
半信半疑のまま車で向かうと、パン屋がありそうにない町並みの中に、それっぽい看板が突然見えて来ました。
周りの電線を蹴散らさんばかりに「ニョキッ」と看板がそびえ立っています。
到着!7時オープンなので7時に行きましたが、既にガヤガヤと人の気配がします。駐車場もラスト1台でした。
石窯工房ハイジ
パン屋さんとは思えない大きな駐車場のある、素敵な店構えのお店です。既に店内では凄い行列が出来ていました。ちなみにお店の南側に第2駐車場があり、こちらはかなりの台数が停めれますよ。
では、店内へ。
中へ入ると、レジからぐるっと入口まで行列が出来ていました。しかし何というパンの種類!
うひゃひゃ~!!
という気持ちをぐっと抑え込み、秘密兵器ガッチアイでトレイに載せるパンをサーチしました。このガッチアイ、普段は役に立たないが美味しいパンを選ぶ目だけは優れていると評判です。行列が1歩進むごとに1個、1歩進むごとに1個、と載せていくうちにトレイの上にいつも以上に標高の高いパン山脈がそびえ立っていました。
なんせ色とりどりの目くるめくパン絵巻が目の前に広がっているので、どんどんトレイに載せてしまうのです。値段も安めなので、トングを持つ手が軽やかにパンに向かっていきます。
なかなか完成度の高い「トトロ」のパンがありました。子供たちがスルーしていくこのパンをおっさんがトレイに載せました。
いっぱい種類があり過ぎてガッチアイがだんだんぶれて来ました。
しかし行列に並びながら選ぶという関係上、1周目で決めないといけません。レジ近くの後半部分にも美味しそうなパンがじゃんじゃん出て来ます。
選べるかこんなもん!
と思っているうちにレジが近づいてきました。ああ~、あのパンも取っておけばよかったー、と後悔の念に駆られながらふと下を見ると、
→2週目
と床に書いてありました。
そ、そうか。じゃあもう1周・・・
いえ、もうトレイに載りません。
周りの人々の視線も痛くなってきたのでもうやめておきました。
このお店のレジは、「ベーカリーファクトリー」さんでお馴染みの、トレイに載せたままで機械がパンの種類を自動で読み取るという最先端の精算システムです。最近流行ってるんですかね。こういう行列のできるお店ではとてもいいと思います。
持参したパン専用巨大マイバッグに入れましたが、この袋がこんなにいっぱいになったのは初めてです。こ、これは明らかに買い過ぎているぞ。
早く家に帰って食べよう。
こちらではイートインスペースでいただくこともできるのですが・・・
店内から丸見えです。
動物園の動物の気持ちを味わいたいというマニアの方にはおすすめです。
ハイジ姉さん、なんか強欲そうに見えるのは僕だけでしょうか。
では、買い過ぎたパンの中から少しだけご紹介しましょう。
彩り野菜のタルティーヌ
普段の野菜不足を解消しようと、つい野菜が入ったパンを買ってしまいがちですが、何かを見落としている気がします。でもいいんです。こんなに美味しいんだから。手を汚さずに食べるのは困難ですが、野菜、ベーコン、パン生地が混然一体となった何とも言えない風味により、途中から気にならなくなります。
台湾焼きそばコッペ
コッペパンに若干スパイシーな焼きそばが挟んであるのですが、これがめちゃめちゃ美味しかった!本日のMVPです。焼きそばパンって、途中で「ガボッ」とそばを吸い込んでしまい、最後はパンだけを空しくかじる羽目になることが多いですが、これは大丈夫です。コッペパンを破壊せんばかりに大量の焼きそばが詰まっているので、途中で吸い込むことはありません。
フランキーボーイ
フランクフルトの入ったパンは絶対どのお店でも買ってしまいます。今回も3種類ぐらい買いましたが、これは名前に惹かれて買いました。手のひらを「グー」の状態にして、握ったまま人差し指と中指の間から親指を出してみて下さい。このパンのようなビジュアルになります。どうでもええわ!と思いながらやってみたでしょ?
味はまあ、普通でした。
するめぱん
うおっ、なんじゃこりゃ~!食べて見ると、ほんまにするめでした。塩辛いするめではなく、駄菓子屋で売っていたような甘辛いするめが入っています。パン生地とするめがイマイチ馴染んでいないような気がしたのですが、食べているうちにはまって来ました。これはなかなか他のお店では味わえない一品ですぞ。
温玉ベーコン
ベーシックな組み合わせながら真ん中の卵の絶妙な半熟加減に心奪われます。日本人は何故こうも半熟にうるさいんでしょうか。自分で卵を焼いて半熟にならなかった時の失望感は想像しただけで恐ろしいです。
次は甘い系のパンです。
パイコロネ
わさびのようなビジュアルですが、パイ生地にカスタードクリームがいっぱい入ったコロネです。クリームの入り口をふさいでいるホワイトチョコがわさび感を出しています。ただのコロネで終わらせたくないというパン職人の方がおられるのでしょう。いいぞ、そのひねくれ根性。
くるみクロワッサン
「初めて行くパン屋さんではまずクロワッサンを買え」と誰かが言っていましたが、確かにクロワッサンが美味しいお店はハズレが無いですね。このクロワッサンも美味しかったです。くるみとの相性の良さが悪魔的です。
さあ、それでは一番楽しみにしていたトトロのパンをいただきましょう。
あれ?なんか歪んでないか?い、嫌な予感・・・。
先生、トトロ君の顔面が崩壊しています。
バッグの中で他のパンにボコボコにされたようです。
可哀想ですがもう手遅れです。見てられないので食べてしまいましょう。
山崎製パンの「サンミー」というパンが大好きなのですが、これは「リッチなサンミー」という趣きでした。チョコ生地のパンの中に白いクリームがてんこ盛り。お腹の部分はクッキーになっています。見た目だけではなく、中身も魅力的な本物の菓子パンでした。これ、また食べたいな~。
と思い立ったらすぐ再訪。
今回はトトロ専用のエコバッグを持参するという、大統領のボディーガード並みの物々しさです。パンにそこまでするかという完全な異常行動です。
しかしその甲斐あって、
トトロ、無事帰還。
またこれだけの為に買いに行きそうです。アホや~。
ケンさん、ありがとう!