ついこないだまで気にも留めていなかったものが、知らぬ間にメインストリームに躍り出て、いつの間にか世界を席巻していることがあります。
新型コロナウイルスなんかはもろにそうですよね。最近ではアフガニスタンにおけるタリバンもそうです。また我が国ではハロウィンが「仮装イベント」としていつの間にやら定着していました。僕はこのイベントには全く馴染めないですが・・・。
日本では特に「おやつ」の世界でこの傾向が強いようにも感じます。
古くは「ティラミス」や「ナタデココ」、近年では「タピオカ」なんかが海外からやって来て、凄い勢いで浸透していきました。
そして最近、新たな侵略者がティラミスの国、イタリアより来襲しました。
その名は「マリトッツォ」。
ブリオッシュと呼ばれる柔らかいパン生地に大量の生クリームを挟んだイタリアの伝統的なお菓子です。
今やどこのスーパー、パン屋さん、ケーキ屋さんでもその異様な姿を目にするようになりました。
僕が最初に目にしたのはスーパーバローのパン売り場でした。
な、何!?このクリームの量!
パンでクリームを挟んでいるというよりは、クリームにパンが必死にしがみついている、という印象でした。
これ、パンを言い訳にしてクリーム食べたいだけやん。
恐らくこれを最初に作った人は子供の頃、冷蔵庫にあった生クリームを大量に食べて親に怒られたのでしょう。そのトラウマから堂々と大量の生クリームを食べれるマリトッツォを発明したのではないでしょうか。一応パンで挟むことで、「これはパンですよ。たまたまクリームを挟んであるだけですよ。」と言いたかったのでしょう。全責任をパンに押し付け、クリームを傍若無人に食べまくるという悪魔のようなお菓子がこうして誕生したのです。・・・ほんまか?
しかし「マリトッツォ」って、人の名前っぽいですよね。以前に当ブログで紹介しました「セミフレッド」もそうでしたが、イタリアの食べ物は人の名前のようなものが多いです。
いてそうやな~。いや、絶対どこかにいるぞ、こいつ。
バローで見た時はドン引きしてスルーしていましたが、その後どんどんメディアでの露出が多くなり、今や一日の中で必ずどこかで目にするほど日本社会に浸透してしまいました。
これは一度食べなくてはなるまい。
調べてみると、何と日本で一番最初にマリトッツォを販売したお店が大阪・京橋にあると判明。2014年から既に売っていたということです。じゃあまずそれを食べてみよう。
と思ったのですが、この「日本で最初の」というフレーズのせいでメディアの取材が殺到し、紹介され過ぎて予約しないと買えなくなっているみたいです。
なんだか見ず知らずのマリトッツォ君をそこまでして食べる義理もないので、身近で普通に売られている物を食べまくりました。
フルーツが挟んであるものや、
おかっぱ頭の可愛らしいもの等、お店ごとに個性が出ているのも楽しいです。
しかし色々食べてみた中で美味しいのはやはり、「パン屋さん」のマリトッツォでした。
それもそんじょそこらのお店ではなく、「名店」と呼ばれるパン屋さんのマリトッツォは危険なぐらい美味しい神おやつでした。
まずはこちらのお店。
ROUTE271
高槻から大阪梅田のど真ん中へと殴り込みをかけ、今や大阪を代表するお店となりました。グランフロント大阪とヨドバシカメラからも見える大行列は梅田名物と言ってもいいでしょう。ここでは2種類のマリトッツォが売られています。
まずは普通のマリトッツォ。
クリーム多っっ!
どこが普通やねん。クリームが多過ぎてパンで挟めず、パンが諦めてぐったりとのけぞっています。クリームの中にチラホラと見えているのは小豆です。
和風マリトッツォ。麻里斗津津尾です。見た目ほど甘くなく、ペロッと食べれますよ。
もう1つはヤンチャなマリトッツォ。
モヒカンのパンクロッカー見参!
船で鋼材を運んでいるようにも見えますね。
こ、これどういう事!?何が載ってるの?
これはカボチャのチーズケーキが載っているのです。さすが船井さん。独創具合が半端ないです。こちらも甘過ぎず、非常に食べやすいです。しかしこれをマリトッツォと呼んでもいいのか?イタリアの方には内緒にしておきましょう。
そして僕のNo.1マリトッツォはこちらのお店にありました。
パリゴ
上本町の名店。四天王寺から少し北へ上がった所にあります。
パンの世界大会で日本代表を優勝に導いたという、凄腕シェフ安倍竜三さんのお店です。お店の名前を書いた看板が出ていないので、通り過ぎそうになります。
小麦のいい香りのする絶品パンが大量に並んでいて、パン好きなら正気を保つのが難しいでしょう。
こちらのマリトッツォは、マリトッツォという名前ではありません。しかし見た目は、
マ、マリトッツォですよね?これ。
違う名前で売られているからなのか、あまり買っている人を見なかったのですが、もしマリトッツォという名前なら、飛ぶように売れていたに違いありません。人間って何て愚かなんでしょう。
これは群を抜いて美味しかったです!
風味豊かなブリオッシュ生地、クリームの美味しさ、全く隙の無い菓子パンでした。
黒い丸いやつが見えていますが正露丸ではないですよ。これはココアクッキーっぽいものでした。これがたまにサクッとした食感を与え、良いアクセントになっています。
もう1種類売られていました。
キャラメル味のクリームに、胡桃が入っています。僕はノーマルの方が好みですが、こちらも絶品でしたよ~。
このお店は本当に凄い。
そしてもう1店舗。こちらも大阪を代表する名店です。
パリアッシュ
フェスティバルホールから少し西へ行った所にある中之島ダイビル本館。その風格ある建物の1階に見える大行列がこのお店の目印です。高級かつお洒落過ぎる外観に僕のような身分の人間は気後れしますが、お店に入ると更にお洒落度が増して入ったことを後悔します。しかし!ここのパンを一口食べると、頑張って入って良かったと思えます。
こちらでもマリトッツォという名前は見受けられませんでしたが、これは確実にそうだろうというパンを見つけました。
「サントロペジェンヌ」という名前で売られていました。
「フランスの伝統的なお菓子トロペジェンヌ」と書いてあります。生地こそブリオッシュですが、中のクリームは生クリームではなく、カスタードクリームが入っています。これはマリトッツォではないな・・・。
いやしかし、この見た目!クリームが違えど似すぎている!
生き別れた兄弟に違いない。
幼き頃、複雑な家庭の事情で兄マリトッツォと離ればなれになってしまったトロペジェンヌ。兄はイタリアで、弟はフランスで「おやつ王子」としてそれぞれ大きな成功を収めました。しかし弟の体内には、カスタードクリームが入っていました。
プライドの高いフランス人の「イタリアと同じは嫌だ」というニーズに応え、クリームを変えざるを得なかったのです。何という、悲劇!しかしカスタードクリームも美味しいのは同じである。結果的に兄弟揃って人々に笑顔と幸せをもたらしたのでした。
ええ話や~!(そうか?)
今日この場で、君たちをスーパーマリトッツォブラザーズとして認定しよう!
というわけでこれもマリトッツォの一種です。パリアッシュさんは生地のクオリティの高さが凄まじいので有名ですが、このブリオッシュ生地も同様で、正に「おやつ王子」の名に相応しい一品でした。
以上、神レベルのマリトッツォをご紹介しましたが、これらのお店はどこも食べログ点数3.7越え。行列必至の人気店ばかりです。なので普段気軽にさらっと買いに行ける訳ではありません。
その点において、僕はこちらの1品がいつでも気軽に買えていいのではないか、と思いました。
クリームシフォン マリトッツォ風
全国のファミリーマートで売られているこの一品。まあこれはあくまでもマリトッツォ「風」なので、マリトッツォではありませんが、非常によくできていて、僕は大好きです。
生地はほんのりとオレンジの風味が漂い、クリームも美味しいです。お値段、ボリューム、近所のファミマでいつでも買えること、トータル的にはこれがベスト・オブ・マリトッツォかもしれません。あくまでも「風」ですが。「風」という言葉は便利ですね。
色々と間違っていても非難されませんから。僕のブログも「風」にします。
「がっちの航海日誌 ブログ風」
なのであまり真剣に読まないで下さいね。
ところで本場イタリアでは、マリトッツォの中に婚約指輪を入れてプロポーズするという風習があるそうです。
さすがイタリア、粋やな~!
と思った女性の皆さん。冷静に考えてみて下さい。
クリームまみれの指輪、本当に欲しいですか?
でも指輪が入ってることに気づけば、まだましな方です。
もし指輪に気づかず、かじってしまったとしたら・・・
あなたは一生「河村市長」というあだ名で呼ばれることになるでしょう。
恐ろしや~。
今日の1曲:ダ・カーポ「結婚するって本当ですか」