よく「県民のソウルフード」とか「ご当地B級グルメ」という言葉を耳にします。
旅行へ行った時に旅館でいただく郷土料理とはちょっと違う、地元の方が日常的に食べている料理やお菓子。そういうものを見つけるのも旅行の醍醐味の一つです。
でも自分が住んでいる所のソウルフードは何になるんだろう?
僕の住んでいる大阪は食べ物が溢れかえり過ぎて、何がご当地のものなのか、判別がつかない状況です。
県外の方がイメージされるのは、「たこ焼き」「お好み焼き」「串カツ」あたりになるのでしょうが、何か違う気もします。
特に「串カツ」は絶対違います。
というのも、大阪の人は普段「串カツ」をほとんど食べないのです。
いつの間にか大阪名物として認知されていましたが、未だに違和感がぬぐえません。
例えばここ5年ぐらいで、僕が串カツを食べに行った回数。
0回です。
あれは観光客向けに作り上げられた幻想なのです。
だから「ソース2度付け禁止なんですよね?」と聞かれても「ああ、なんかそうらしいですね」としか言えません。うーん。誰が勝手に名物にしたんだろう?美味しいんですよ、確かに。でも断じて大阪名物ではありません。
じゃあ何が名物なの?
それはもう、
「おじやうどん」でしょう。
何それ?
名前の通りです。
「うどん」と「おじや」の夢の炭水化物コラボです。
出たっ!大阪人が大好きな、炭水化物に炭水化物を重ねる恐怖の栄養バランス。
そして大阪の食文化といえば「ダシ」の文化。
この2つを兼ね備えた「おじやうどん」こそが大阪のソウルフードだと断言しましょう。
しかしこのおじやうどん、大阪のどこでも食べれるというわけではありません。
ミナミにある老舗うどん屋さんでしかいただけません。
それもそんじょそこらの老舗ではなく、世界史に名を残すほどの凄いお店なのです。
うさみ亭 マツバヤ
創業明治26年の歴史あるお店です。
「天神橋筋商店街」と並び称される大阪の有名商店街、「心斎橋筋商店街」から少し東へ逸れたマニアックな通りにお店を構えています。
そして何と言っても「きつねうどん発祥の店」として歴史に名を残す名店なのです。
そのオリジンきつねうどんのダシを使ったおじやうどん。美味しくないはずがありません。
店構えは一応老舗感は出ていますが、威圧的な感じは一切なく、非常に親しみやすい雰囲気です。なので凄いお店なのに気軽に入れます。
だからといって油断してはいけません。
たま~に厨房から喧嘩をしている声が聞こえてくるのです。
でもこれは大阪のお店では決して珍しいことではありません。
昔、よく行っていたうどん屋さんがあり、カウンターのみのお店で、完全オープンキッチンだったのですが、客の目の前で堂々と喧嘩が始まるのです。
それも仕事のことで喧嘩するならまだしも、全然関係のないプライベートな内容で喧嘩が始まることもあったのです。
「ここは家か」
とシンプルにツッコんだことも何度かありました。
でも喧嘩をしている目の前のカウンターで、お客さんは「ズルズルッ」と音を立てて普通にうどんを食べていました。まるで喧嘩の音声をBGMにでもしているかのように。
この「喧嘩屋うどん」に比べれば、マツバヤさんの喧嘩は非常に上品な部類です。ですからこの大阪スタイルに馴染みのない方も、気軽にお越しくださいね💛
さて、肝心のおじやうどんですが、先程まで喧嘩をしていたとは思えない満面の笑みで女将さんが持って来てくれました。この変わり身の早さ。
これが浪花の商人魂や。
そして姿を現した「おじやうどん」の眩し過ぎるビジュアル。
おじやうどん
これこれ。四角い鉄鍋のリングで繰り広げられる、怒涛の炭水化物バトルロイヤル。
いつもこれを食べる時、僕の頭の中には懐かしのTVアニメ「タイガーマスク」の主題歌が駆け巡ります。
白い~うどんの~、ジャ~ングルに~♫
ダシの~旨味が~、しみわ~た~る~♩
穴子とかしわと椎茸と~、最後にご飯をぶ~ちかませ~♪
ゆけ~、ゆけ~、おじやー、(おじやー)、おじやーうーどーん~♩
普通に食べろよ。
奥深い味の極上ダシの中で暴れまくる、うどんと様々な具材たち。
下の方からご飯が出て来た時には、涙なしでは食べれません。
混沌としたカオス状態でありながらも、ダシ番長が見事にそれを一つにまとめている感じです。
うどんでもない、おじやでもない、マツバヤさんだからこそ作りえた最高のコラボです。1+1が200ぐらいになってます。
普通こうゆうのってすぐに他のお店が真似をし、広がっていくものなのですが、不思議とこの「おじやうどん」は亜流が存在しません。
恐らく真似をしたところで、この次元には到達できないことを皆さんわかっておられるのでしょう。
どんどん寒くなってゆくこれからの季節。今年の冬は寒くなるという長期予報も出ています。そんな時、このおじやうどんを食べれば、身も心も温めてくれますよ。
最初の一口、レンゲでダシをすくって飲めば、
ああ~
と冬に露天風呂に入った時の声が出ることでしょう。
真冬に来阪された折には、是非食べてみて下さい!
沁みますよ~。
でも実はこの写真を撮ったのは、
暑さのピークを迎えた真夏の真っ昼間でした。
服を着たままサウナに入ったような熱さに襲われました。
うどんにデトックス効果をお求めの変態の方には、あえて真夏に行くこともオススメします。
今日の1曲:やしきたかじん「やっぱ好きやねん」