今年の冬は寒い!
寒い時に無性に食べたくなるのが「焼き芋」。
子供の頃、「ポーっ」という美しい音色と共に現れる石焼き芋の車を羨望の眼差しで見つめていました。
しかし何故か、頑なに買ってもらえず、どんどん小さくなってゆく車の後ろ姿を、哀愁に満ち溢れた瞳で見送るしかありませんでした。
大人になったら自分で買ってやる、とその度に思っていたのですが、いざ大人になってみると、今度は石焼き芋の車が全然来なくなりました。
このもどかしい、届かない思い。
もういいよスイートダーリン。僕の方から会いに行くよ。
ということで寒い寒い休日の朝、「芋」を食べに出かけました。
大阪で芋といえば、あそこ。
阿倍野が誇る絶対的芋王者、「嶋屋」。
でもせっかく阿倍野まで行くのであれば、芋だけ食べて帰るのはもったいないので、
「チンチン電車で行く、食べ歩きミステリーツアー」
と銘打ち、本能の赴くままにB級グルメを食べ歩いて来ました。
朝8時前に天王寺に到着。
まずはモーニング処へ向かいます。
無駄に背の高いあべのハルカス。
その南隣の足元にあるお洒落カフェ。
パールズ
朝7時半からやっている大人気のカフェ。
ここを一躍有名にしたのが、名物「ワンナコッタ」。
犬の形をしたパンナコッタですが、これがあまりにもリアルすぎると話題になっているのです。
食えるか、こんなもん!!
ひよこ饅頭ですら食べるのを躊躇するのに、こんなリアルなワンちゃんをどうして食べろと・・・。
普通のモーニングを注文しました。
普通だ。世の中、普通が一番です。
ツナのサンドウィッチがとても美味しかったです。
コーヒーは酸味が少し強いものの、さっぱりと飲みやすい。
追加注文した、だし巻き玉子のようなフレンチトーストもリッチな食感でフィーバーしていました。
ごちそうさまでした。
レジで精算していると、横に衝撃の光景が広がっていました。
ワンナコッタ、大量生産。
表情を付けられる前のワンナコッタ達が受注待ちをしておりました。
表情がないと不気味です。
「おい、お前。ワシを食べんと帰るんか。」
帰るわっっ!
逃げるようにお店を出ました。
さて、嶋屋は9時半開店なので、まだ開いていません。
目の前を走るチンチン電車に乗り、一旦阿倍野を離れることにしました。
大阪市内は2路線あり、天王寺駅前から出発する「上町線」と、恵美須町から出発する「阪堺線」があり、住吉で合流してからは1路線となって、堺の浜寺駅前までのんびりと走行しています。
始発点の駅なので、路面電車とは思えない立派なホームがあります。
おもむろに住吉大社へ向かいます。
いろんな車両が次々とやって来るので、車両を選ぶ楽しみがあります。
乗車方法はバスと同じです。
降りる駅の手前で降車ボタンを押し、運転手さんの横にある箱にお金を投入します。
交通系ICカードを使う場合は、乗る時と降りる時にカードをかざします。
休日の朝なのに、結構な人が乗っていました。
では、ゴトゴトと揺られながら、出発進行!
しばらくすると、どんどんディープな住宅街に突入していきます。
ここからは、「絶句する景色」という意味での“絶景”が臨めます。
家が近い。
近すぎます。家と家の間を縫うように走ります。
目の前を物干し竿が通過していきます。
この距離感は普通の電車では味わえません。
ひたすら住宅街を疾走し、住吉鳥居前に到着。
ここで降車する時の注意点!
この写真を見てください。
電車と車の間にあるわずかなスペースが駅のホームです。
勢いよく降車するとホームを飛び越してしまい、確実に車にひかれてしまいます。
ゆっくりと、道路側の状況を確認しながら降りるようにしましょう。
横断歩道を渡れば、住吉大社です。
いや、そっちに渡るんじゃない。薬局のクセが強い。
逆に渡ると、
摂津国一之宮であり、全国に2300もあるという住吉神社の総本社として、全国から参拝客が訪れる大神社です。
境内には樹齢1000年を越える御神木が何本もあり、歴史を感じると共に、荘厳な雰囲気に包まれます。
神社の前にクセの強い薬局があったことを忘れさせてくれます。
そして住吉大社といえば、この橋。
反橋(太鼓橋)
住吉大社を象徴する橋。初詣の時には人で溢れかえり、非常に危険な状態になります。
僕は今まで初詣の時にしか来たことがなかったので、あまりいい印象はなかったのですが、こうして人の少ない時期に来ると、なんて素敵な所なんだろうと驚きました。
なかなかの傾斜です。こんな所に人が溢れていたとは・・・。
もう初詣に来るのはやめておこう。
境内をくまなく回り、たくさんお参りしました。
凛とした空気に包まれ、神聖な気持ちになったところで、
食べ歩きスタート!
まずはクセ強薬局の前にあるお店で、もっちもちの饅頭を食べて食欲スイッチを点火。
そして昭和臭100%の「粉浜商店街」に入り、
優しいおばあちゃんが切り盛りするお店で「キャベツ焼」を購入。
キャベツ焼、驚異の130円。安っ!
次に、住吉で食べ歩きするには絶対に外せない、
名店「洋食 やろく」のテイクアウト専門店。
すぐ近くにある本店の方は長蛇の列でハードル高め。
でも住吉へ来たからには名物「玉子コロッケ」は絶対食べたい。
そんな人にはとてもありがたいお店です。
近くの公園へ移動して、ベンチでいただきます。
おばあちゃんの愛情が溢れた一品。
何もかもが値上がりしているこのご時世なのに、キャベツと卵がモリモリ入って130円。しかも結構デカいです。安すぎます。
子供の頃、スイミングスクールの帰りに買い食いしていたお好み焼きを思い出させてくれるノスタルジックな味がして、とても懐かしい気分になりました。
玉子コロッケ
名前から想像する以上に玉子が入ってます。じゃがいもは一切使われておらず、中はとってもクリーミー。
ゆで玉子を中心に、ハム、海老が入った具がはち切れんばかりに入ったコロッケ。ここでしか味わえない逸品です。
素朴だけどリピートしたくなる魔力がある。
近所にあれば僕の腹囲はどんどん広がっていくでしょう。
ごちそうさまでした!
適度にお腹を満たしたところで、そろそろ阿倍野へ戻ります。
住吉さん、ありがとう。
阪堺電車は車両に書かれた文字が多い。走る看板です。
帰りは往年の大阪環状線カラーの車両に乗りました。
住宅街を再び突っ切ります。
「物干し竿近いねん!」とかツッコミながら乗るのも楽しい阪堺電車。
ずっと残して欲しい文化です。
帰りは嶋屋に程近い阿倍野駅で下車。
さあ、本日最大の目的、嶋屋でお芋の時間だ!
嶋屋 本店
阿倍野へ来たらここに寄らずには帰れない、お芋の聖地。
昨今のお芋スイーツのブームに乗り、たくさんのお店が乱立していますが、未だにここを超えるお店は存在しません。
これからもないでしょう。
ちょっと長いコテコテのキャッチフレーズ。
それでは名物「三嶋焼」をいただきます!
美味っっ!!
上町台地から湧き出る井戸水に塩と秘伝の調味料を入れ、10時間もひたした後、特製の釜で黒ごまをふって焦げ目をつけてから、じっくりと蒸し焼きにするらしいです。
見た目は普通の焼き芋ですが、食べて見るとひと味も、ふた味も、み味も違う!
異次元のホクホク感。何とも言えない甘み。さすが大阪の芋大王です。
と、お店の前で満足気にほおばっていると、前を阪堺電車の新型車両が通過しました。
おおーっ!3両編成!似合わね~。
チンチン電車感ゼロ!スイスイ電車です。
でもこれはこれでカッコいいなあ。
ごちそうさまでした!
しかしまだまだ人間の欲望は止まりません。
帰り際、持ち帰り分の「三嶋焼」と「阿倍野ポテト」を買いました。
三嶋焼
改めて家で見ると、その美しさに感動します。
そして冷めても美味い。
そしてもう一品。
三嶋焼と双璧をなす、もう一つの嶋屋名物「阿倍野ポテト」。
いわゆる大学芋ですが、こちらも三嶋焼と同様、他のお店では味わえない逸品です。
この専用の特製蜜をドバッとかけていただきます。
表面がカリカリではなく、しっとりとしていて唯一無二の個性を放っています。
これもまた、紛うことなき大阪の大学芋No.1です。
やっぱり凄いぞ嶋屋のお芋!
最近では梅田の阪急百貨店にも出店していますが、本店で買うのがいいですね。
芋で膨れ上がったお腹を見て見ないふりをして、その日は眠りにつきました。
「ワシはいつ食べてくれるんや?」
未来永劫、食べません。
今日の1曲:The Beatles「Magical Mystery Tour」