2021年も終わりに近づいた年の瀬のある日。
この日は日本政府から重大な発表があるという。
今年を表す「漢字一文字」が発表されるのだ。
(あ、あれっ?ちょっと前に京都のお寺で発表されてなかった?)
そしてその大役に抜擢されたのが、モーニング省の「さくら事務次官」だという情報が入り、世間が沸き立った。
知識豊富な賢者である彼女なら、きっと素晴らしい漢字を選んでくれるに違いない。
誰もがそう思い、期待値が自ずと高まったのである。
そして当日、我々は幸運にも、さくら事務次官の独占密着取材をさせていただけることになった。
さくら「皆さん、今日はよろしくやで。ほんなら早速やけど、私のルーティーンに付き合ってもらうで。」
さくら「まずは、心斎橋の洋食屋さんでディナーやで。」
しかしまだディナーという時間ではない。16時だ。
さくら「早い方が空いててええんやで。」
さすがモーニング省の職員だ。晩ご飯もかなり早めにとるようだ。
大阪メトロ心斎橋駅から徒歩5分程、御堂筋沿いにある「トヨチカ名店街」にそのお店はあった。
御堂筋ロッヂ
老舗の洋食屋さん「洋食勝井」が展開する、超人気店。名前通り山小屋をイメージした店内は、ちょっと暗めのムーディーな雰囲気で着席するだけで夢見心地になる。
さすがさくら事務次官だ。こんなお店に通っているとは、お目が高い。
さくら「ほんなら食べよか。あんたらの分も用意してるで。」
ありがとうございます!ではご一緒させていただきます。
さくら「まずはドリンク頼んでや。」
事務次官の前には、緑茶のような物が運ばれてきた。
さくら「これな、お茶みたいに見えるけど、梅酒のお湯割りやで。」
失礼しました。
さくら「ほんならオードブルからいくで。」
おおっ!いきなり豪華絢爛じゃないか。王道のエビフライを初め、黒毛和牛の握り寿司、サーモン、チキン、豚肉、貝・・・料理名が出て来ないのは恥じ入るばかりだが、とにかく豪華だというのはわかる。
さくら「これ見てな、『エビフラ~イ、オオタニサン』とか言うたらあかんで。そんな事言い出したら人間終わりやで。」
ううっ。言いそうになった。やはり彼女は全てを見透かしているようで恐ろしい。
オードブルをいただいていると、パンが運ばれてきた。
バゲットをオリーブオイルに浸して食べる。
オリーブオイルが目玉おやじのようなビジュアルになっているが、この真ん中の黒いのはバルサミコ酢だ。
このバゲットにより、オードブルの美味しさがより際立っていた。見事な相性の良さだ。
次にコーンスープがやって来た。
さくら「このスープの器、可愛いやろ?でもな、それ以上に中身が美味しいんやで。」
確かに可愛い。エスプレッソカップのような大きさだ。だが事務次官の言うように、スープが驚きの美味しさだった。やはり洋食屋さんのスープはコーンスープが一番だ。
スプーンを使わずに「くいッ」と飲めるのが嬉しい。
さくら「次はな、牡蠣のグラタンやで。」
さくら「私な、牡蠣が苦手なんやで。そういう時はな、苦手な物を先に言うておくとな、違うのに替えてくれるんやで。今日はもう手遅れやけどな。」
可哀想な事務次官。こんなに美味しい物が嫌いだなんて。海のミルクと大地のミルクの華麗なる競演だ。クリーミー且つプリプリで、抜群に美味しかった。
しかし事務次官は偉い。嫌いな物でも残さずに最後まで食べていた。
すると次に、不思議な物が運ばれてきた。
さくら「これな、グラスに入ってるけど飲み物とちゃうで。サラダやで。間違えてグイッと飲んだらあかんで。」
なんてお洒落なサラダだ!上でグダッとしている蟹の身がいい仕事をしていた。
そしていよいよメインが登場した。
黒毛和牛のビーフソテー
メインはいろいろある中から選べるようになっていた。一番高いのはステーキだ。てっきり事務次官はそれを注文すると思っていたのだが、上から3番目のビーフソテーを選んだ。
さくら「ステーキよりも、こういうのが洋食屋さんらしくていいんやで。」
なるほど。
私も同じのにしたが、大人な感じのデミグラスソースと柔らかい肉の相性が抜群だった。ポテトとマスタードが更に料理の完成度を上げてくれている。
本当に美味しい。
さくら氏はお酒が弱いらしく、ようやく2杯目を頼んだが、ソフトドリンクだった。
さくら「これな、『シマノウチ』っていうねんけどな。ジンジャーエールにハチミツを入れたような感じでな、すごく美味しいんやで。」
あまり他のお店では見たことのない一品だ。
締めのデザートはサンタクロースのような色合いのプリンだ。甘過ぎず、美味しい。
珈琲も美味しく、最後まで抜かりのない見事なコースだった。
アマビエさん、ありがとう。
さくら「ごちそうさまやで。ほんなら、歩くで。」
極上のコース料理で完全に昇天した我々は、トヨチカ名店街から外へ出た。
すると、
外はすっかり暗くなり、御堂筋イルミネーションが始まっていた。
なんば~梅田まで、御堂筋をひたすらライトアップしてくれている、年末から年始にかけての風物詩だ。
さくら「洋食ディナーの後に梅田までイルミネーションを楽しみながら歩くのが、毎年のルーティーンやねんで。歩くで。頑張ってや。」
エリアごとに色も変化するので飽きてこない。梅田まではかなりの距離だが、あっという間だった。
車はいつも通りの渋滞ぶりだったが、イルミネーションのおかげでイライラすることはないだろう。この光の下では、誰もが笑顔になっている。良い事だ。
そしてついに、「今年の漢字」の会場に到着した。
司会のおっさん「皆さま、お待たせいたしました。只今、モーニング省のさくら事務次官が到着されました。」
パチパチパチパチ。
司会のおっさん「今年は延期になっていた東京オリンピックが遂に開かれ、メジャーリーグの大谷翔平選手と共にコロナ禍の我々日本人に希望の光を与えてくれました。さあ、事務次官はどのような漢字を選ばれるのでしょうか?各界著名人から色々な予想が出ているようです。
それではさくら事務次官、今年の漢字一文字、よろしくお願いいたします!」
さくら「そんなん無理やで。」
司会のおっさん「えっ!?」
さくら「1年365日、それぞれに悲喜こもごものドラマがあり、1日として同じ日は無いんやで。
それをたった一文字の漢字でまとめるなんて、とんでもない暴挙やで。
もっと1日1日に感謝して生きていかなあかんで。」
「国民の皆さま、ええ加減にしいや。」
19時のGHKニュースです。たった今、速報が入りました。
モーニング省のさくら事務次官が、今年1年を漢字一文字で表すことに対し、懸念の意を表明いたしました。
そして国民に向け、「1日1日をもっと大事に過ごすように」との談話が発表されました。
これで19時のニュースを終わります。次は紅白歌合戦です。
それでは皆さま、良いお年をお迎えください!
今年も「がっちの航海日誌」を最後までご覧いただき、ありがとうございました。
途中で心の病を発症し、更新が途切れたこともありましたが、皆さまの温かい応援のおかげで復活することができました。
来年もこのままアンダーグラウンド臭の強いブログを更新していきますので、お時間があればまた覗いていただければ幸いです。
オミクロン株による第6波の恐怖がひたひたと忍び寄っている年末年始ですが、前を向いて、気をつけて頑張っていきましょう!
来年は良い年になりますように。
いや、良い年になります。絶対に。
では、また来年お会いしましょう!
なんでこんなに字でかいねん。
今日の1曲:よしだたくろう「今日までそして明日から」