ここはGHK大阪放送局である。
とあるドキュメンタリー番組宛てに1本のビデオテープが届いたのは、正月明けの肌寒い日の午後であった。
今時ビデオテープというのも凄いが、我々が驚いたのはそのテープの送り主と、ヨーロッパから送られてきたという点だった。
送り主というのは、大物政治家であった。
ここで嫌な予感がした方は、このブログを熟読している変人の方であろう。
そしてその予感は的中している。
モーニング省の合致朝一(がっちともかず)大臣から送られていたのだ。
元日に合致城への入城を拒否された大臣が何故ヨーロッパに居るのか?
一体何を伝えようとしてきたのか?
謎を解く為、我々はとりあえずそのテープを再生してみた。
「皆さん、あけましてボンジュール!私は今、ヨーロッパのとある街に来ています。訳あって国名は明かせません。日本では私のやる事なす事、全てが炎上し、挙句の果てに正月にご挨拶に伺った合致城へ入ることも許されず、途方に暮れておりました。
もう日本には私の居場所は無くなっていたのです。
そして傷心の内に無意識に向かったのは、ヨーロッパでした。幼い頃からヨーロッパの歴史に興味があり、一度は訪れたい、と思っていた場所です。
また私は、『マノウォー』というヨーロッパでは絶大な人気を誇るヘヴィメタルのバンドが大好きなのですが、日本でマノウォーを聴いていると変人扱いされるのです。
ですから私がヨーロッパに癒しを求めて旅立つというのは、必然的な行為であったとも言えるでしょう。
ただ私は、『職務放棄をして海外へ逃亡した』と言われるのは我慢がなりません。
そこで、ヨーロッパに居てもモーニング大臣の責務を果たすべく、
『ヨーロッパの朝食』を日本国民の皆さまにご紹介しようと、このVTRを送らせていただいた次第であります。
それでは華麗なる朝食の世界を、ヨーロッパの威厳があり、かつ優雅な美しい町並みと共にお楽しみ下さい。
歴史を感じさせる建造物。そして美しい水辺の風景。
建物の中も実にゴージャスです。
街と建物が見事に調和しています。これも長い歴史が成せるわざでしょう。
今日のモーニングはこちらの建物の中にあるカフェでいただきます。
あまりの荘厳な雰囲気に飲まれそうになりましたが、せっかくはるばるヨーロッパまでやって来たのです。勇気を出して入る覚悟を決めました。
中へ入ると、いきなりタイタニック号のような階段が出迎えてくれました。
トレビア~ン ♫
さすがヨーロッパ!
この廊下の突き当りにお店がありました。
窓から心地の良い陽の光が差し込む、至高のくつろぎ空間がそこにありました。
このお店ではデンマークの伝統料理である、
「スモーブロー」というものがいただけるようです。
スモーブロー??全く聞き慣れない言葉です。
特撮ヒーローの必殺技か?
「とどめだ悪者!これをくらえ!
必殺!スモーブロー!!」
いえ、どうやらそうではないようです。
パンの上におかずを載せた、「オープンサンド」のようなものだそうです。
オープンサンドというのは不思議な言葉です。挟んでいないのにどうして「サンド」というのでしょう?
それはともかく、優雅な朝食にはぴったりですね。3種類の中から選べます。私は「ローストビーフ」にしました。
ほほう、これが「スモーブロー」か。
どこにパンがあるのでしょう??
ただのローストビーフにしか見えません。
めくると下にありました。何という薄いパンでしょう。
食パンで言うなら20枚切りぐらいでしょうか?
しかしこれが美味しかったのですよ、皆さん!
オープンサンドというよりは立派なお食事です。
朝から栄養もたっぷりで、その日1日が元気に、幸せに過ごせそうです。
人々を健康に導いてこそのモーニング。モーニング省の大臣として、私はこの「スモーブロー」を是非日本人にもお勧めしたい!
また日本に戻ってやり直そう。そしてまた人々を健康な生活に導いていかなければ。私は強く決心致しました。日本へ戻り、「骨太の方針」を実行することを国民の皆さまにお約束いたします。それでは、アディオス!
ここでVTRは終わっていた。
結局ヨーロッパのどの国にいるのかは明かされず、「スモーブロー」を勧めてきた以外に何を伝えようとしていたのかもわからずじまいだった。
我々マスコミの間に、大臣に対する更なる不信感が生まれた。
そしてその矛先は、大臣のいない今、実質モーニング省のトップである「さくら事務次官」へと向けられた。
「事務次官!合致大臣は今どこの国にいるのですか?」
「ヨーロッパへの旅費に税金を使ったというのは本当ですか?」
「何故わざわざヨーロッパへ行く必要があったのですか?」
すると事務次官の口から衝撃の事実が明かされた!
さくら「あれな、ヨーロッパとちゃうで。」
「・・・と言いますと!?」
さくら「お店のある建物の映像まで巻き戻してみ。」
さくら「そうそう、そこやで。右下の看板を拡大してみ。」
「わかりました。ズームイン!」
ういいーん。
ああっっ!!
さくら「バリバリ大阪やで。」
なんということだ!中之島図書館じゃないか!
さくら「テープに映ってる映像、全部中之島の建物やで。お店の入り口もズームしてみ。」
さくら「バリバリ日本語のメニューやで。」
うああっっ!おのれ大臣!
さくら「大臣はな、あんたらの地元愛を試したんやで。あの建物を見て、大阪を愛する人やったらすぐに中之島やって気づいたはずやで。あんたらほんまに大阪の人間か?」
さくら「あんたら、大阪に住む資格ないで。」
そう言い放ち、事務次官は愛車の日産プリメーラに乗って去っていった。
大臣を追い込むつもりが、逆に説教をくらう羽目になってしまった。
やはり恐るべし、さくら事務次官。彼女には敵わない。
そして翌日、
梅田でシャトレーゼのアイスをほおばりながら歩く合致大臣の姿が目撃された。
今日の1曲:Santana「哀愁のヨーロッパ」