がっちの航海日誌

日々の些細な出来事を、無理やり掘り下げます。

ヤン坊マー坊、リオ・ブラボー

1980年代初頭。

大阪のとある小学校で行われていた「図画工作」の授業。

そこでは子供たちが「割りばし鉄砲」の作り方を学んでいました。

割りばしを色々な長さに切り、それを輪ゴムでつなぎ合わせながら鉄砲を作るという高度なカリキュラムでした。

 

完成した割りばし鉄砲を手にした子供たちは、当時大流行していた機動戦士ガンダムのキャラクターになり切り、激しい撃ち合いを繰り広げていました。

 

割りばし鉄砲の「弾」は輪ゴムです。先に輪ゴムを引っ掛けてトリガーを引くと輪ゴムが発射されるのですが、なかなかの凄い勢いで輪ゴムが飛んで行くので、当てられた子が泣き出すなど、教室が修羅場と化していました。

 

地球連邦軍ジオン軍に分かれ、激しく輪ゴムが飛び交うこの戦場。

今の時代ならコンプライアンス的に完全アウトでしょう。

赤い服を着た少年は自動的に赤い彗星と呼ばれ、太った少年はゴッグと呼ばれていました(これもアウトですね)。

 

しかしその中に、どちらの軍にも属さない少年がいました。

 

その少年は、表向きはジオン軍に属しながら、心の中では

「ふん、誰がジオン軍やねん。

俺はジョン・ウェインや。」と思っていました。

 

なんと、数多のモビルスーツが入り乱れる宇宙の戦場にただ一人、西部のガンマンが紛れ込んでいたのです!

 

その奇異な少年は、当時夕方に放送されていた古い洋画が大好きで、特に西部劇を好んで鑑賞していました。

そして西部劇の代名詞的な存在であった俳優、ジョン・ウェインが大好きだったのです。

割りばし鉄砲を手にした少年は完全にジョン・ウェインになり切り、次々と敵のモビルスーツを撃墜していきました。

その中には輪ゴムを当てられ、泣き出すモビルスーツもいました。

 

でもこのガンダムごっこは、すぐにブームが去っていきました。

激しい戦闘のせいで、少年たちの割りばし鉄砲はあえなく壊れていったのです。

そんな中、ジョン・ウェイン少年は1人、割りばし鉄砲の製造を続けました。

取り憑かれたように、何丁も量産しました。

そしてその銃ひとつひとつに、名前をつけました。

「シェーン」サンダンス・キッド「ドク・ホリデイ」など西部劇に出てくる人物の名前をつけ、誰にも共感されることのない、自分だけの世界に浸っていました。

 

しかしこのマイブームは、突然終焉を迎えました。

台所の割りばしが急激になくなっていくのを不審に思った少年の母親に銃の密造工場が見つかってしまい、激しく雷を落とされたのです。

 

その暗黒少年は現在、ギリギリ真っ当な社会人としてつつましく暮らしているそうです。

 

さて今日は、大好きな俳優ジョン・ウェインの作品の中でも、特に大好きな映画、

リオ・ブラボーをご紹介しましょう。

(前振り長っっ!!)

 

(あらすじ)

メキシコ国境近くの町、リオ・ブラボー

その町はネイサン・バーデットというギャングが牛耳っていた。

ネイサンが町を離れていたある日、バーデット一味の蛮行に業を煮やした町の保安官チャンスは、ネイサンの弟、ジョーを殺人の現行犯で逮捕し、牢へぶち込む。

 

これに激怒したネイサンは、金で雇った殺し屋を町へ送り込み、町は不穏な空気に包まれる。

町の人々はネイサンの報復を恐れて誰もチャンスの味方になろうとはしない。

 

結局チャンスの味方は、アル中の保安官助手デュードと、片足が不自由なスタンピー爺さん、たまたま町を通りかかった若き早撃ちガンマン、コロラドの3人のみ。

 

そしてネイサンが町へ戻り、ジョーを取り戻すべく脅しをかけるがチャンスは応じない。

町を守る為、ガンマンとしての誇りを賭け、チャンス達はたった4人で巨大な悪に立ち向かうのだった。

 

というありがちな話です。

 

リオ・ブラボー

 

1959年 アメリカ作品

 

監督は「赤い河」など数々の名作を世に送り出した巨匠、ハワード・ホークス

 

保安官チャンスに西部劇の大スター、ジョン・ウェイン

アル中の保安官助手デュードに当時の人気歌手、ディーン・マーティン

若き早撃ちガンマン、コロラドにこれまた当時の人気カントリー歌手、リッキー・ネルソン

足が不自由なスタンピー爺さんに、名脇役ウォルター・ブレナン

ありがちな話と言いましたが、映画の内容はありがちではありません。

とんでもなく面白い作品です。

アクション、スリル、サスペンス、ロマンス、コメディ、娯楽映画に求められるすべての要素が詰まった、映画史に残る大傑作です。

 

ジョン・ウェインの作品は、良くも悪くも彼の存在感が強過ぎて、見終わった後に彼の印象しか残らないことが多いのですが、この映画は違います。

次々と魅力的な登場人物が現れ、時にはジョン・ウェインを凌ぐ存在感を放っています。

特にこの映画を面白くしているのが、スタンピー爺さんを演じたウォルター・ブレナン

ハリウッド黄金時代を支えた名脇役

3大スターの競演にスポットが当たりがちなリオ・ブラボーですが、見終わった後、一番印象に残っているのはウォルター・ブレナンだった、という人は少なくないはずです。

この作品が単にスリルと緊張感に溢れる西部劇ではなく、終始ほのぼのとした雰囲気を感じさせてくれるのは間違いなくブレナンの功績です。

 

そしてもう一つ、この映画を語る上で見逃せないのが、音楽

作品中に流れるBGMも秀逸ですが、何と言っても見どころは、

ディーン・マーティンリッキー・ネルソンという人気歌手の競演。

決戦前、保安官詰所でのセッションは、この映画のハイライトです。

二人が掛け合いでデュエットする「ライフルと愛馬」は鳥肌もののカッコよさです。

子供の頃からずっと探していたこの映画のサウンドトラック。

遂に近年発見し、即購入しました。

ありがとうアマゾン!

ネット社会も悪い事ばかりではない。

 

子供の頃から数えると、何度観たかわからないリオ・ブラボー

イケメン好きのおばあちゃんも大好きな映画でした。

これからもまた、何回も観ることでしょう。

 

「西部劇なんて古臭くて嫌だ」

「西部劇なんて撃ち合ってばかりで嫌いだ」

 

そんな偏見をお持ちの人にこそ観てほしい、本当に面白い映画です。

 

このブログを書く前にも観たのですが、クライマックスの決戦のシーンを観ている時、あの割りばし鉄砲を撃ち合っていた時のことを思い出していました。

 

割りばし鉄砲のゴムが当たった時って、そんなに痛かったのかな?

 

思えばジョン・ウェインになりきっているのをいいことに、大勢のクラスメイトに銃口を向け、輪ゴムを当てました。

泣いた子もいました。

おもむろに指に輪ゴムをかけ、自分の額に向け発射してみました。

 

ぴしゃっ!

 

痛っっっ!!!

 

浪花のジョン・ウェイン、今頃になって人の痛みを知る。

 

今日の1曲:Dean Martin & Ricky Nelson「ライフルと愛馬」